小田原市がこのほど「人口減少時代のまちづくりと公共施設に関する市の取り組みについて」と題し、市内6カ所で市民説明会を開催した。近い将来直面する課題に向け、策定中の2つの計画が説明された。
市の人口は2000年の約20万人をピークに減少が続いている。2040年の人口は、現在から約3万人減の約15・5万人と推計され、市では少子高齢化、財源不足等の課題を踏まえながら「持続可能」な小田原市のありかたを検討している。
施設、人口を計画的に集約
説明した「立地適正化計画」はまちづくりの方向性を示すものだ。現在市内では、商業や医療等の生活サービス施設が多くの住民が住む地域をほぼカバーしている。しかし人口減少・少子高齢化が進むと施設の撤退などにより、それら生活サービスを含む都市機能が低下する恐れが生じるという。
そこで目指すのが「コンパクトシティ」。計画的にサービス施設を拠点に集約、居住を公共交通沿線エリアに誘導し、施設や人口の密度を維持するものだ。小田原駅周辺や市内各エリアの「拠点」を公共交通で結ぶ「多極ネットワーク型」のコンパクトシティ像を描いている。
市では、先行して施設を集約する「都市機能誘導区域」を設定済みで、今年度に人口密度を維持するための「居住誘導区域」を設定する。秋頃には素案をまとめ、年度末に計画を策定する方針だ。
「すべてを維持することはできない」
もうひとつが「公共施設再編基本計画」。市が管理する建築物は、築30年以上が約80%(面積)を占めるなど老朽化が進む。試算では、すべての建築物を「築60年」のタイミングで建て替える場合、保全費用は今後30年間で約1820億円。市の投資可能額との差引で1070億円の財源が不足する。
人口減少で税収が減り高齢化で福祉や医療への支出が増えるなか、市では「今ある施設をすべて維持することはできない」と言及。施設の複合化や統廃合を進めつつ持続可能な行政サービスを提供するとしている。同計画も今年度末に策定予定だ。
市では「今回はこれから想定される課題や、市の取り組みを総論的に説明した」という。説明会の参加はいずれも少数で「市民への周知については引き続き考えていく」と述べた。