元教員が伝える至福の一杯 螢田駅すぐ『ひな珈琲』

掲載号:2019年6月1日号

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対話を大切にする池上さん。かつての教え子も通ってくれるそうで「嬉しいですね」
対話を大切にする池上さん。かつての教え子も通ってくれるそうで「嬉しいですね」

 小田急線の駅で乗降客数ワースト5に入る螢田駅。賑わう商店街や観光スポットもない少し寂しい駅前ビルの一角に、ぽつんと構える一軒の店。目の前を通ると、芳しい珈琲の匂いが漂ってくる。「ここを一等地に」と根を下ろす「ひな珈琲」だ。

 店主の池上直樹さん(56)は、いわゆる脱サラ組。大手自動車メーカーに就職後、培った知識と技術を買われて工業系専門学校の教員に転職、約25年間教鞭をふるった。「18〜25歳位の若者との真っ向勝負」はやりがいある仕事だった。だが40半ばを過ぎた頃から漠然と不安に襲われたという池上さん。「定年後も一生続けていける何か」を求め、各地を訪ね歩いた。そこで東京の街かどで異彩を放つ一軒の珈琲店と出会う。業界では知る人ぞ知る名店『バッハ』。この時「理屈じゃなく直感でこれだと思った」。

 教職を辞め、派遣社員として働く傍ら週末はバッハに通い、修行を積んだ。師匠田口護氏の教えは「焙煎やドリップという技術だけでプロになったつもりになるな」。珈琲の命である豆に、どんな背景があるのか。生産国の歴史に始まり、珈琲にまつわるあらゆる物語をエッセンスにして提供することで、より美味しさが増す―。修行の日々は2年続いた。

 店を構えるにあたり「立地に頼るな」というのもバッハの教えだ。生まれ育った地で「ひな珈琲があるから螢田に来る、そんな一等地にしたい」。開店当初はひやかす客も多かった。だが「お客様が爆発的に増える特効薬はない。丁寧に焙煎し、美味しい珈琲を提供するだけ」。希少な豆を全国の仲間と仕入れ、その一粒一粒をハンドピッキングするこだわりも、そのためだ。

 池上さんはこの程、日本スペシャルティコーヒー協会の認定資格『アドバンスド・コーヒーマイスター』を取得した。全国で350人程が登録するが「小田原市内で合格したのは唯一でしょう」と胸を張る。コンテストで研鑽を重ねるのも全ては最高の一杯を淹れるため。「珈琲は知的で学べばもっと美味しく、楽しくなる不思議な飲み物」。自身が学び、誰かに伝える…「教員の経験も活きているかもしれませんね」と笑った。
 

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