手彫りで伝える思い、今も 印章職人・武井良雄さん

社会

掲載号:2022年5月21日号

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手入れをしながら50年間使い続けてきたという印刀で、全身の感覚を使い印章を彫る武井さん
手入れをしながら50年間使い続けてきたという印刀で、全身の感覚を使い印章を彫る武井さん

 かつて戦国時代に小田原を治めた北条氏が全国に広げたという印の文化。そのお膝元、小田原市栄町で50年以上にわたり手彫りの印章を作り続けている武井良雄さん(68)が、2022年春の「黄綬褒章」を受賞した。模範となるような技術や事績を有する人に授与されるもので、「これまで指導してくれた師匠や仲間に感謝を伝えたい」と喜びを表現する。デジタル化で印章文化が衰退しつつある中で、「印を押すことで伝えられる意思はまだあるはず」と職人として信念を語る。

 武井さんは、小田原で父の営む「武井印鋪」の後を継ぎ、高校卒業と同時に印章の世界に飛び込んだ。生まれついての手先の器用さもあり、特にひときわ細かい図柄を彫刻する「密刻」を得意とする。30代で全国大会に出場し、作品「小田原の外郎売」で金賞を受賞したことを皮切りに、全国の舞台で活躍。2000年に「大印展」で文部科学大臣賞を受賞し、その後審査員も務めている。その傍らで、日本で唯一の手彫りを専門とする印章の養成学校「神奈川県印章高等職業訓練校」で指導員も務め、10年からは校長として後進の指導にも力を入れてきた。

 「自分が職人を志した50年前は、県西では12店ほど印舗店があったが、今では片手で足りてしまう」。機械化の増加などで手彫り需要が減り、後継者も減少し続けている現状。昨年、生徒が1人になったことから、最後の卒業生を見送り、閉校となった。「自分の子どもにも無理に継げとは言えなかった。でも寂しいね」と、父から受け継いだ印刀をそっとなでる。

 「本当に印はもう不要なのか」と自問自答の日々。それでも店には子どもに、孫に、自分に、と手彫りの印章を求める人が後を絶たないのもまた事実だという。その人を思ってじっくり時間をかけて彫る印章には、機械では出せない味わいがある。さらに、「押印は決意の気持ちを表現する儀式でもある。例えば病の床に伏して字が書けなくても、代弁してくれるそれが印」と武井さん。「必要と信じて、依頼がある限り彫り続けたい」と思いを語った。

60mm四方ほどに龍や菩薩などが細かく掘られた密刻の作品
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