岩手から箱根に編み物の講師を呼んだ 高見 亜希子さん 箱根町仙石原在住 44歳
東北とつながってみたい
〇…7日に箱根宮城野で小さな編み物教室を開いた。講師は岩手県宮古市かの編み物団体から招いた女性二人。暖かな部屋で毛糸をたぐりながら、時折震災について言葉を交わす。つい最近まで被災地に行った事はなかった。「後ろめたさというか、これでいいのかなと。イベントを機に被災地とつながってみたかった」。昨年秋に家族で宮古市を訪れ、漁業関係者に当時の記憶を聞いてまわった。行って分かったのは津波の恐ろしさだけではなく、大変な思いをしてなお海と生きる人々の姿。それを「美しかった」と振り返る。
〇…親が転勤族で、小学生の頃から転校先になじむのが得意だった。長かった都会暮らしの反動か田舎を求めて茨城大学農学部へ。動物たちを育て、自分の手でさばく野性味あふれる青春時代。最大の収穫は研究で没頭したサル山の行動学だ。3ヶ月かけて上野動物園に密着取材してサルに処世術を学んだという。「老いたサル、強いサル、子育てザル。苦手なものがあっても、距離をおけば共存できる事がわかった。逃げ場もある。観察しながら弱いサルを応援してました」。
〇…その後就職せずに高知県のユースホステルに居候。接客の合間に鮎を釣ったり畑を手伝い、2年後には運営を任されるまでに。32歳の時に「もっと世間を見てみたい」と箱根に移った。宮城野の空き家を再生して宿を始めた矢先に東日本大震災が発生。観光客の姿が消え、ロマンスカーも来ない。「箱根ってみんなが幸せじゃないと成り立たないんですよね。あの時は計画停電のさなかに泊まってくれた方に助けられた」。
〇…自宅の縁側には太陽光パネルが置かれ、薪ストーブが香る。「災害があっても自力で何とかしたい」という試みだ。夜は怖いほど真っ暗になる山奥なのに「すばるやアンドロメダ星雲が見られますよ」とにっこり。周囲は森。何もない所だからこそ際立つ、美しいものを見つめている。
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