新学習指導要領の武道例でメディア注目
2021年度以降に実施する学習指導要領の中学武道例に「銃剣道」が加わった。竹刀のかわりに持つのは「木銃」。横浜や県央では複数の団体があり、県内の中学校で授業に採用された例もあるが、県西の競技人口ごくわずか。このマイナーな武道を広めようと地道に活動している人が、真鶴町にいる。
普段は小田原で会社員として働く福田幸博さん(58)は、神奈川県銃剣道協会小田原支部の代表だ。メンバーはまだ3人で、稽古相手を求めて静岡に出向くことも多い。山梨学院大在学中に同好会で銃剣道を知るまで、ほとんど武道には縁がなかったが、稽古を重ねて全国大会にも出るようになった。先月は県大会の団体戦で3位を獲得している。
剣道のルールと異なり胴や面を叩いてはならず、肩や喉への突きによって勝敗を決める。相手の木銃をどう払い、どこから突くべきかという瞬間的な判断の連続。防具は面や胴に加え、上腕部や脇に硬く分厚い「肩」や「裏ぶとん」を装着、短い竹刀の短剣道など異種との試合も銃剣道の特色だ。「たとえば短剣の相手が懐に飛び込んできたら、木銃にはなす術がない。相手の長所と短所を認め、相手から学ぶ事が大切です」。福田さんは短剣と長刀の稽古も合わせて続けている。
銃剣道は槍術などをルーツに明治期に誕生した武道だが、最近は戦前の訓練というイメージや競技人口に占める自衛隊員数などがクローズアップされがち。「軍事的思想はありません。ひとつの確立された武道として捉えてほしい」と願う。
福田さんは7年ほど前に肺がんの診断を受けた。当時は自分の命だけでなく家族の将来が頭に浮かび、葛藤が1週間続いた。「この場を打開する方法を考え、今できる最大限の事を全力でやろう」。病を受け入れ、気持ちを切り替えられたのは「長年続けてきた銃剣道のおかげ」と振り返る。
小田原真鶴で説明会を開催
このほど学習指導要領に加わった事については「ぜひ学校でもやってほしい」。福田さんは地元の競技人口を増やすべく、今月8日には小田原の城山陸上競技場で体験教室を開催(午後1時〜)、6月11日に真鶴町立体育館でも説明会(午後2時〜)を予定している。