一定条件のもとで民泊を可能にする通称「民泊新法」の施行が2ヵ月後に迫った。近隣とのトラブルを防ぎ、健全に運営させることを目指したもので、3月8日に県が小田原合庁で開いた説明会には参入を検討する不動産業者や行政関係者など60人ほどが集まった。事業者の届出は3月15日から始まり、3月末時点での届出は1件(県西エリア)にとどまっている。
新法が定める条件は細かい。営業日数は180日の制限があり、施設には宿帳を設けて宿泊者の本人確認や国籍・日数の報告、24時間の苦情対応などを義務付ける。特に集合住宅での民泊の場合は、規約上禁止されていないことを証明しなければならない。その余波でマンションの管理組合サイドが民泊の可否を話し合う動きも出ており、湯河原でも複数の大型マンションが禁止を決め、ロビーに注意の張り紙を出す施設もある。民泊を認めるマンションは取材で見つけられなかった。
県は新法につけ加える形で、箱根の一部住宅地に限り別荘利用シーズンの民泊を規制する条例案を議決、指導方針の詳細も浮かび上がりつつある。
地元のホテルや旅館関係者にとって、民泊は一部が競合する可能性もある。従来の「旅館業法」などのハードルをクリアするため、安心・安全に投じてきた資金も大きい。その分民泊事業者にも同様のレベルを求める声がある。「民泊に反対するわけではないが、法を遵守してほしい。監督もしっかりと。そうでなければ万が一何かあった時に観光地全体の印象に関わる」(箱根温泉旅館ホテル協同組合)。
一方で民泊は湯河原や真鶴で増える空家の活用策としての可能性もある。ただ地元宅建協会の幹部は「積極的な空家対策という所まではいっていない感がある。有効な手段かもしれないが旅館やホテルとの兼ね合いもあり、民泊の旗を振るのは難しい」と話した。