7月28日夜に到来した台風12号は満潮時刻に重なり、小田原・真鶴・湯河原など西湘にも爪あとを残した。漁港や海岸には高波に破壊された大量の流出物が散乱した。前例のない規模と被害に驚きの声も多かったが、一刻も早く元の風景を取り戻そうと関係者と地元住民が炎天下で力を合わせた。
西湘バイパス石橋IC近く、市が漁港内に建設中の「交流促進施設」では、強化ガラスや壁などが破れて内部に石が散乱した。江之浦付近では高波でパトカーや奥湯河原分署の救急車(搬送中)などが流され、署員らは標高の高い場所に避難した。現場を走った湯河原町民の男性は「路面と波が同じ高さになり、波が押し寄せるたびに車体が揺れた。引いた時にアクセルを踏んで何とか抜け出せた」と振り返った。
防潮壁越えフェンス曲げる
真鶴町ではこの日の夜までの予定だった「貴船まつり」を午前中で終了し、小早船なども素早く解体して嵐に備えた。その後、会場近くの県港湾管理事務所は1階が破壊され、軽トラが水没した。琴ヶ浜の歩道フェンスは防潮壁を越えた波によって押し倒され、コンクリート製の建材が散乱。中川一政美術館付近の道路面は降った木の枝や葉で覆われた。
湯河原町の福浦では漁港の赤灯台を大きく越える波が打ち寄せ、翌朝から漁業関係者が総出で港湾内の浮遊物を回収した。作業に加わった男性は「ボートが波にゆすられ、食らい付いて引き上げたが、底に穴が空いてしまった」。波は港周辺にもあふれ一帯は水深50cmほどに冠水。泥だらけの道を歩く住民は「建物内にも水が入った。こんなのは平成になって初めて」と話した。
湯河原海水浴場の波は真鶴ブルーラインの高架付近まで高まり、その下に軒を連ねていた海の家12軒や警備本部などが壊滅状態に。様子を見に訪れた経営者の男性は「50年やっていてここまで酷いのは初めて。波が急に高くなり、15分ほどで全部なくなった」とつぶやいた。
「波に負けていられない」一部海の家は再開を模索
現地では翌朝から撤去・清掃作業が行われ、海水浴場内はライフセービングクラブが潜って水中の安全をチェックしている。8月12日に音楽イベント「ビーチ・ジャム」を計画していた海の家「みはらし」もほとんどを流されたが、イベントは予定通り開催する予定だ。関係者は「波に負けてられない。ステージを作り直し、復興のイベントする」と語った。このほか数軒が何らかの形での営業再開を模索している。
熱海市のホテルニューアカオでは、海に面したレストランの窓ガラスが波で割れて浸水したほか、湯河原と熱海をつなぐビーチラインで海側の壁が破損、また沿道のホテルリゾーピア熱海ではホテルの壁の一部が破れ、駐車場の車が波で流された。