11月に年に一度の「華道展」…湯河原町華道協会の会長を務める 溝口 和美さん 湯河原町吉浜在住 61歳
雨風ふいても花と生きる
○…湯河原の秋にふさわしい作品が並ぶ「華道展」。8つの流派の作品がそろう年1度のイベントを運営している華道協会の会長さんだ。協会メンバーはほぼ各流派の指導者たち。ちょっと敷居が高そうに思えるが、この人に言わせると「アットホームですよ」。巷の華道展では珍しく各作品に花材やイメージなどの説明文を添える。来場者が分かりやすく、という試みも、ベテランたちが「やってごらんなさい」と後押ししてくれた。
○…沖縄出身、小田原育ち。「フルーツパーラーで友達とパフェをほおばるのが幸せ」だった小田原城内高校時代に、花嫁修業で入門。師匠の口癖は「花一輪ほど難しいものはない」。その指導は深夜まで続く日もあった。45年たったいま、自宅の玄関には古めかしい「宏道流」の看板が置かれている。教える側になっても「受講生の大胆な作風や個性に出会える」と探究心は尽きない。看板の隣に紫色のハナトラノオが生けられていた。家族が庭で大切に育てたという。食卓には蕎麦猪口に菊のツボミが顔を出し、ゆっくり花開くのを楽しむ。近所に落ちているミカンも絶好の素材だ。
○…3人を育てるベテランお母さん。数年前に認知症の父を介護することになり暮らしが一変した。部屋の冷蔵庫に文房具が入っていたり、買ったばかりの家具も捨ててしまう。会社でブルドーザーを操っていた昔の姿が目に浮かぶ。別宅の父を訪れるとドアノブを握る手が震えた。そんな時に支えになってくれたケアマネやデイサービスは今も忘れられない。意思疎通が難しくなった頃、道端で撮影した花を見せると「綺麗だな」と笑顔に変わった。5年前に父は他界。今は写真クラブにも加わって花と向き合う。一輪がつなげてくれたものははかりしれない。
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