フランスの農事功労章を授与された 南谷 桂子さん 湯河原町在住 62歳
外からの視点、発見の連続
○…差し出す名刺には湯河原とパリの連絡先が書いてある。敷居の高いイメージのあるフランス料理を身近なものにしようと1年前に別荘地で「ロティスリー桂樹庵」を開いた。別荘を相続した時「人の笑い声が聞こえる場にしよう」と決め、計画を近隣にプレゼンすると「町が活性化するかも」と背を押された。大きな看板はないが、家族のようなフランス人スタッフと流暢に話しながら働いている。「赤ちゃん連れでも大丈夫。眠くなったらベッドもあるから」。肩肘張ったムードはない。
○…東京タワーの周りを鬼ごっこして育った。中高生の頃に名優・アランドロンに魅せられ、フランス語に入門。高校卒業時に「1年だけ」と親を説得して渡欧、その約束は実に40年以上伸びた。日本企業の駐在員時代に外食先の料理をメモするようになり、食に関するコラムが日本の新聞などに載るようになった。現地の男性との結婚を経てフードジャーナリストとして独立。庶民派の店や三ツ星を目指すシェフたちの姿を追った。過去の原稿を見せてもらうと、五感を刺激する文章がのぞく。吸収したい思いを相手にぶつけて本音を聞き出し、料理は舌で確かめる。貫いた現場主義が食文化への貢献としてフランスから評価された。
○…「海山に温暖な気候。世界に誇るべき温泉があり、大人が楽しめる町」。外から見る湯河原は魅力満載だ。別荘族だったという思いもあり地元の交流を求めて朝市に菓子を出している。ミカンの詰め放題は見逃さない。袋が弾けそうなほどに詰めて持ち帰ってタルトに。それを知った生産者と会話が弾まないわけがない。骨董品好きで時々リサイクル店に顔を出す。満面の笑みで「桜の季節に使える皿があったの」。お宝はまだ当たり前の風景の中に埋もれている。
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