綾瀬市に2025年８月、多機能型療育施設「yururi」（深谷中2-20-10）が新規開設した。新築した建物の２階では、子どもたちの「できた」を褒めて伸ばし、「自己肯定感」を育むことを重視したユニークな療育が行われている。

充実した支援体制と利用環境

　「yururi」は未就学児が対象の児童発達支援と、小学生から満18歳までが対象となる放課後等デイサービスの双方を提供する。20年以上にわたり、保育や障害分野の現場での勤務歴を有する経験豊富なスタッフが揃い、一人ひとりに寄り添った支援がなされる。

　放課後には学校から、利用後には自宅への送迎も実施している。対応地域は綾瀬市と海老名市の全域、大和市南部（桜ヶ丘駅以南）、藤沢市北部（湘南台駅以北）におよび、広い範囲から利用しやすい施設となっている。

当事者目線でのサポート

　同施設の管理者、金子雅世さんの弟は重度の発達障害であり、付きっきりでサポートする母の姿を見て、家族の大変さを実感してきた。「発達障害児の暮らしやすい環境を作り、その家族を支えたい」という思いから一念発起。勤めていた会社を辞め、他施設での勤務を経て、「yururi」を開業した。「家族と支援者の両方の視点を持つ自分だからこそ、できることがある」と金子さんは話す。

　子どもと関わる中で重視するのは「褒めて伸ばす」こと。できないことに目を向けるのではなく、「友だちと遊ぶことができた」や「プログラムに参加することができた」といった小さな成功を褒めてあげることで自己肯定感を高め、前向きに取り組むことを促す。

ダンスを取り入れた運動療育

　「yururi」のプログラムで重視しているのは、身体を動かして五感を刺激し、視覚や聴覚といった発達の基礎を鍛える「運動療育」。同施設では「ダンス」を取り入れ、楽しみながら療育に取り組む。

　目標は振り付けを覚えることではなく、動きを再現して全身を動かすこと。ダンスをするためには、「手本を見て目から情報を入れ、頭で認識し、身体を動かす」という情報処理が行われており、その過程で脳が刺激され、認知機能や記憶力の向上が期待されるという。

　ダンス療育は毎日30分程度実施しており、基本的なストレッチをした後に、子どもたちが選んだ曲に合わせ、鏡の前で一緒にダンスを踊る。子どもたちがスタッフにダンスを教えることもある。

ゲーム形式の治療や畑での食育も

　ダンス療育の他にも、的当てなどのゲームを取り入れ触覚や聴覚を刺激する「感覚統合療法」や、家庭菜園での野菜作りを通じた「食育チャレンジ」も実施予定。楽しみながら取り組めるプログラムを多くすることを心がけているという。

　「嫌いな野菜を食べられるようになったり、ボールを狙った方向に投げられるようになったりと、『できるようになった』を多く生み出していきたい」と狙いを話す。

施設の特性を活かした世代間交流も

　「yururi」は綾瀬市で15年以上にわたり、高齢者介護事業に取り組んできた「manate株式会社」が運営し、建物の１階には高齢者向けデイサービスが併設されている。

　この強みを生かし、夏祭りやハロウィーン、クリスマスなどの季節のイベント時には合同のイベントを実施する。その他にも、高齢者へのお菓子の配布を手伝ったり、お話をする機会を設けたりと、世代間の交流を産むことを心がけている。高齢者と関わった後には、子どもたちは「じいじ、ばあばがたくさんいるみたい」「昔の話が聞けて楽しい」と、目を輝かせていたという。

「みんなと一緒に」で社会性を育む

　今まで紹介したダンスや高齢者との関わりの様に、「yururi」では「人と関わりを多く持つことで社会性を育んでほしい」という思いから、子ども一人ひとりの療育を意識しながらも集団で行動するプログラムを多く取り入れている。「みんなで楽しくやったことが、自分のためになっていた」を理想に、多くの子どもが一緒に参加できるように取り組んでいる。

　気持ちが落ち着かない時に利用する静養室には扉を設けておらず、スペースの中から外の様子を伺い、いつでも友だちの輪に戻れる様に工夫されている。

　管理者の金子さんは「身体を動かすことが好きなお子さんや社会性を育んでもらいたいと考えているご家族には、合っている施設だと思います。見学も受け付けているので、お問合せ下さい」と呼び掛けている。