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緑区 人物風土記

公開日:2025.05.29

5月29日に横浜にぎわい座で行われる横浜大空襲祈念のつどいで体験を語る
鈴木 康弘さん
長津田在住 93歳

大空襲の記憶、後世に

 ○…1945年5月29日。いつも通り学校に向かうと空襲警戒警報が出され、帰宅を余儀なくされた。それまで大規模な空襲は無く、その日も自宅の裏山に寝転び空を見上げていた。聞こえてきたのはアメリカの戦闘機による機銃掃射の音。そして空にB29爆撃機の大編隊が広がった。バラバラと大量の焼夷弾が落とされ、地上近くで散開する姿がはっきり見えた。気付けば街は火の海に。「あの光景は今も目に焼き付いている。忘れられない一日だ」。そう静かに話す。

 ○…昨年、中区の地域交流拠点で初めて横浜大空襲の体験を語った。それまでは「人前で話すことでもない」と考えていた。しかし、同級生らも鬼籍に入り、当時のことを知る人も少なくなった。「戦争が風化してしまうことは不安。記憶をつなぐ役に立てれば」との思いから講演を引き受けるように。今日29日に横浜にぎわい座で行われる「横浜大空襲祈念のつどい」でも壇上で、自らの体験を語る。

 ○…幼少期に父を亡くし、母と2人の姉、兄と家族5人で中区に暮らしていたが、大空襲を機に母の実家のある長津田に。市立横浜商業学校(現・横浜商業高校)で野球を始め、日本石油(現・エネオス)でも投手として活躍した。クラブチームでもプレー。72歳の時に胃がんで胃の摘出手術をしたが80歳まで現役を続けた。野球部仕込みの体力で「今も電車やバスに乗っても座らないよ」と元気に笑う。

 ○…時間が経ち年齢を重ねれば、記憶はどうしても薄れていく。そのため、年表を含めてまとめ上げた資料は膨大だ。「ただ、どんな話をしようとも、聞く側に興味を持ってもらわないと響かない。できれば若い世代にこそ耳を傾けてもらいたい」

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