2011年の閉鎖後、新たな利用法が検討されてきた綱島東のパナソニック綱島事業所跡地が、次世代都市型のスマートシティとして整備される。敷地内には、米アップルの研究開発施設や複合商業施設などの設置が決まっており、地域住民らを中心に注目が集まっている。全面竣工は17年度を予定。
1960年に旧・松下通信工業株式会社の拠点として開設し、通信・無線・計測機器の生産などを行ってきた同跡地。最盛期の95年頃には約4000人の社員が在籍するなど、綱島地区を代表する工場として稼働してきた。11年には事業所の役割を終えたとの理由で閉鎖。その後は、新たな活用法が検討されてきた。
パナソニック株式会社はこのほど、横浜市や野村不動産株式会社らと協同で、環境配慮型の次世代都市型スマートシティ「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン」を開発することを発表した。同社は、保有していた総敷地面積3万7900平方メートルのうち、全体のおよそ9割にあたる3万4400平方メートルを売却。残りの3500平方メートルを継続して所有することになる。
次世代都市型スマートシティとは、パナソニックが進める工場跡地などの遊休地(企業不動産)を活用するプロジェクト。「持続可能な社会への転換」をキーワードに、燃料電池の導入や太陽光蓄電池などの再生可能エネルギーの積極的な登用を予定しており、県内藤沢市で現在推進中の同様の取り組み続くものだ。
アップルが技術開発施設
売却した敷地の一部、「スマート技術開発ゾーン」(1万2500平方メートル)には、もっとも注目度が高いアップルの技術開発施設が16年度に設置される。弊紙の取材に対し同社は「設置されることは事実。環境に配慮をした施設にしたい。それ以外のことは答えられない」とコメントした。
ユニー、業態を検討
また、「スマート商業ゾーン」(1万8300平方メートル)には、ユニー株式会社の複合商業施設が出店されることになる。同社は近隣に「アピタ日吉店」を既存運営しているが、「今回のものは全くの新規出店ととらえているので、既存店舗閉鎖などの考えはない。業態の選定など、周辺のニーズを分析し、慎重に進めていきたい」と話した。
売却地にはそのほか、保育施設を備えた約100戸の家族向けマンションが建設される「集合住宅ゾーン」(3600平方メートル)、広場や歩行者用通路が整備される予定だ。
中学校設置は叶わず地元「見守っていきたい」
パナソニックは引き続き保有する3500平方メートルの土地に、街の中核的拠点施設を設け、売却地の管理を行う。
情報通信技術を活用したセキュリティサービスの提供のほか、水素などをはじめとするエネルギーの活用などを予定しており、同社は「具体的な活用法は検討していく」と語る。
「世界のIT企業が綱島に来ることは街のほこり」。大谷宗弘綱島地区連合自治会会長は同開発について語った。11年の事業所閉鎖後、同地域では周辺に公立中学校がないことから、地域住民を中心に整備を横浜市に要望してきたが叶わなかった。
大谷会長は「中学校ができない点に関しては残念だが、マンションが100戸であれば影響はないだろう。地域としては温かく見守っていきたい」と話した。
市も誘致に協力
横浜市は今回の開発に対し、企業誘致などの面で協力。また、これまで市がエネルギー受給バランスの最適化に向けたシステム導入などを進めてきた「横浜市スマートシティプロジェクト」の手法や成果などの情報交換をする意向示している。現在は、神奈川東部方面線整備「新綱島駅開設」や、関連する新綱島駅周辺整備、区民文化センターの導入も予定されており、市としても街全体の活性化を期待している。「市内には大小の工場跡地が存在している。今回のケースを今後にいかしたい」と、市担当者は話す。
今後、各事業者は「まちづくり協議会」(15年度上期)を発足。街づくりの実現に向けたコンセプトや目標を策定する。15年度から随時着工。18年度に全てのサービスを開始する。
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