掲載号:2009年7月16日号
○…真っ白な紙にまるで絵が描いてあるかのようにすらすらとはさみを入れていく。リクエストされるお題は、花見の風景や人物像、アニメのキャラクターなどさまざま。「技術は付いてくるものだけど、感性はそうはいかない」との思いから、日頃から美しい風景や絵、芝居などを見るようにしているという。「自分の気持ちに触れたものって、人に伝えたくなるでしょ。私はそれを紙で表したいの」と少し熱を込めて話す。
○…日本舞踊や歌舞伎を好んだ祖母と浅草に通っていた子ども時代。目の前で繰り広げられる煌びやかな世界や観客を楽しませる芸の虜になり、「芸人さんになりたい」と幼心に思いを秘めていた。しかし、その漠然とした夢の道へ進むことはなく、短大卒業後は輸入玩具会社に就職。「私のやりたいことはなんだろう」と模索する中、芸人への道を捨てきれず、足繁く寄席に通うようになった。
○…寄席の中でも目を留めたのが「紙切り」。鮮やかな手つきで、白い紙と黒のセル板だけで表現するというシンプルな手法ながら、躍動感や臨場感溢れるはさみと紙の芸術に魅かれた。「やりたかったのはこれだ」とすぐさま教室に通い、桃川忠師匠のもとで芸を学んだ。だが、舞い込んで来る仕事は路上でのパフォーマンスなどが多く、望んでいた「舞台」上での仕事ばかりではなかった。「どんな仕事でもこなしてきた。そうすることで、きっと望む仕事が来ると思っていたから」と振り返る。
○…今年はプロとして活動して10年目。公演は全国各地で行われ、多忙な日々を送る。「たくさんの人との『ご縁』があったからこそ、こうして舞台に立つことができている」。今回も「ご縁」をきっかけに桂台南の「グランボア」2階で7月25日に行われる「栄にぎわい寄席」に出演する。まもなく50回目を迎えるにぎわい寄席だが、紙切り芸人の出演は初めて。紙とはさみで人々に感動を与え続ける。
2016年6月16日号
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