ホーム > 栄区版 > 人物風土記 > 山根 一仁(かずひと)さん
掲載号:2010年1月 7日号
○…横浜みなとみらいホール(西区)で昨年11月29日に開催された「全日本学生音楽コンクール全国大会」バイオリン中学校の部で1位になり、公募により集まった選定員の市民198人が選んだ「横浜市民賞」も受賞した。「国内最高峰の学生コンクール」と言われる同コンクールで輝かしい結果を得ながらも、「バイオリニストになるためのスタート地点にようやく立てた」とさらりと言い放つ。
○…全国大会の曲は、旧ソ連の作曲家・ショスタコーヴィチの「バイオリン協奏曲第1番」を自ら選んだ。スターリン政権下にあった独裁的な社会体制の中で作曲された同曲は、バイオリンを始めたきっかけの曲でもあり、思い入れも深い。難易度の高い曲だが「全国大会ではこの曲を」と始めから決めていた。圧政の中、自由に音楽がつくれない苦悩など、作曲家の思いを伝えるため当時の時代背景を学んだ上で舞台に立った。
○…重々しく寂しげな旋律から、悲しみを越え第4楽章のクライマックスへ−。演奏中は、ショスタコーヴィチの写真を後ろに背負っているような気持ちで臨んだ。「中学生が演奏するには生意気な曲。『弾かせていただきます』って感じでした」と振り返る。「未熟なところも多かったけど、今の自分は出し切れたかな」。満足している様子だが、点数は「90点」と満点ではないところが彼らしい。
○…バイオリンを始めたのは5歳から。豊かな音色を奏でる楽器に魅了され練習を重ねた。しかし、今では「練習はあんまり好きじゃない」。テレビゲームに没頭し、コンクール前には両親にゲーム機を没収されてしまったという。「早くゲームがしたい」と言いつつも、「今回賞をとれたのは偶然かもしれない。もっと基礎を勉強しないと」と更なる技術向上を目指している。将来は「作曲家の思いを伝えられるようなバイオリニストになりたい」。飾り気なく、それが「なるべくしてなる道」のように夢を語った。
2016年6月16日号
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