除夜に響かぬ称名寺の鐘 老朽化進み、保存を優先
金沢八景の一つ「称名晩鐘」として名高く、昔から地域の人々に愛されてきた称名寺の鐘。大晦日に「ゴーン」と響く除夜の鐘は、金沢の風物詩でもあった。参拝客が列をなし順番に撞くのが恒例で、一晩に1000回ほど鳴らしてきたという。だが、今年からその鐘の音を聞くことはできない。造鋳から約710年の時がたち、鐘の老朽化が進んだためだ。
「国の重要文化財でもある鐘なので、万が一でも割れてしまったら大変なこと。保存を第一に考えました」と須方隆證住職(67)。県立金沢文庫に現物を保管し、新たに鐘を造る構想もあったそうだが、「やはり本物があるべき場所は境内の鐘楼」と考え、現状のまま保存することになった。
称名寺の鐘は、金沢北条氏の初代・実時が文永6年(1269)に父・実泰の7回忌供養として造らせた。その後、破損してしまったため、現存する鐘は息子の顕時が正安3年(1301)に改鋳したものだ。大正12年の関東大震災で、鐘楼ごと落ちてしまったものの、再建された。しかしそれ以来、音色が変わったとも言われている。
なお、区の事業として行われていた年末年始のライトアップも、事業終了に伴い、今年から見ることができなくなる。
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