ツートンカラーの花 匂いはくさいが食用「クサギ」 日本自然保護協会自然観察指導員金子昇(富岡西在住)
クサギは山林の縁や道路脇で見られる落葉低木で、非常に生活力が強く、石垣のような過酷な環境でも、種子から芽生えて成長します。若い茎や葉からは不快な匂いを出すので、この名があります。臭いながらもこの若芽は山菜の一つとして食用にしています。
花は5枚の赤い萼片(がくへん)と白色の花弁からなり、とてもきれいな白と赤のツートンカラーです。しかも茎葉と違い、花からはユリに似た甘い香りを出し、虫たちを誘っています。また花筒は2〜3cmと長いため、大半の昆虫は蜜の所まで口が伸びず、もっぱらアゲハチョウの仲間(クロアゲハが多い)がその蜜を独占しています。花は雄蕊(おしべ)が先に熟し、その後雌蕊(めしべ)が成熟し、他家の花粉を受けるようにしています。
夏空に咲くクサギの花は、濃緑色の葉、白と赤のツートンカラーの花、訪れるクロアゲハの黒色、そして夏の真っ青な空という強烈な組み合わせが大変印象的に見られます。
秋には、青藍色の丸く光沢のある果実をつけ、赤紫色の萼片と共に、これまたよく目立つ存在で、鳥にすぐ食べられます。このように鳥に目立つような2色の色合いを持つことを「二色効果」といいます。この熟した果実を薬品で処理し、布を染めるときれいな緑色になります。伊豆地方では、丸い実と5枚の萼片の様子から、頭と衣に見立てて、「ボウズグサ」と呼んでいるようです。
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