記者が訪ねる かなざわの名刹 第19回 野島山染王(ぜんのう)寺
野島山のふもと、住宅地の一角にあるこの寺。山門に刻まれた「王」の字が印象的だ。表通りの喧騒からも離れ、境内ではゆったりとした時間が流れる。
創建については定かではないものの、1382(永徳二)年に了意という比丘尼(びくに)(尼僧)が築いた庵が始まりとされる。当時は、野島山の頂にあったともいわれる。そののち、1500年代に「善應(ぜんのう)寺」が開創され、やがて「染王寺」の表記となった。
境内には4つの墓石からなる塚があり、「筆子塚」と呼びならわされている。江戸時代の元禄年間から享保年間にかけて建てられたものだという。ここに眠る4人は、この寺と、近隣にかつて存在した正覚院の住職。墓石には、「施主 手習子共」と刻まれているのが見える。当時2つの寺は、島の寺子屋のような役割を担っていたのだろう。この塚から、恩師の死を悼んだ教え子らの切なる思いを読み取ることができる。
【本尊】聖観世音菩薩
【宗派】真言宗御室派
【住所・電話】金沢区野島町5の1 【電話】045・781・8838
(資料・金沢区仏教青年会
「かなざわ霊場めぐり」1994年)
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