物語でめぐる金沢 『モラルの罠』(夏木静子著 文春文庫)文・協力/金沢図書館
防犯システムの弱点を利用した「システムの穴」、鬱積された思いが熟年離婚とは違うかたちで現れた「偶発」、精神科の医師がひょんなことから以前の患者が詐病だったのではないかと疑念を抱く「痛み」、宅配業者に成りすましての「贈り物」、そして、保険金を不当に搾取しようとする「モラルの罠」。日常の生活の中に潜む犯罪の可能性をテーマにした短編集です。
表題作「モラルの罠」は、横浜が舞台です。
金沢区の海の公園近くの団地に住み、ベイサイドマリーナのアウトレットモールで生活雑貨の店を経営している母と、就職先の都合で独立して千駄ヶ谷のマンションに住んでいる”私”。友人らと車で1泊旅行に出かける前日、”私”のマンションに泊まりに来る予定になっている母が、到着して良い時間になっても現れません。午後6時9分に「第三京浜に居る」と留守電が入っているものの、7時半になっても現れず、時間が経つにつれ”私”に不安が募ります。
夕食の誘いを連絡してきた同僚の車で、母が使うであろう道路を逆に辿ります。娘のマンションに行くときは必ず使うと言っていた第三京浜玉川インターチェンジまでの道を1往復半した後、第三京浜に入って保土ケ谷まで行ってUターン、上りの都筑パーキングエリアに変な角度で停まっている車を見つけます。母が鳥浜営業所で借りたというベルガでした。
金沢区は具体的な舞台ではありませんが、身近な地名や施設が出てくることで、状況がイメージしやすくなっています。
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