季節の花㉖ 「カラムシ」今は雑草化 越後上布 薩摩上布の材料 日本自然保護協会自然観察指導員 金子昇(富岡西在住)
区内の道端や繁みの縁などで普通に見られる「カラムシ」は、背丈1〜2mの大型の草本です。大きな葉で、裏が白く直ぐにわかります。古くから繊維を採るための栽培植物でしたが、戦後は利用されなくなり、野生化していきました。
茎を蒸して表皮を剥ぎ取り、細い繊維にしていきます。名の由来は、茎を蒸すことから「茎蒸し」→「乾蒸し」となりました。古くは「苧麻」(ちょま)ともいい、弥生時代の遺跡からカラムシで織った布が発見されています。カラムシの繊維は細く美しい光沢があり、麻と比べると「月とスッポン」で、奈良時代の織物では最高級品として扱われました。現在でも越後上布や薩摩上布の原料として利用されています。
9世紀頃になると、ワタから採れる木綿が渡来して普及したため、カラムシが顧みられなくなり、次第に栽培畑から逸脱し、野生化(雑草化)していきました。第2次世界大戦中の物資の乏しい時代には、カラムシを採取して軍に供出したといいます。
花は茎の上部に雌花序、下部に雄花序をつけますが、あまり目立ちません。葉の表面は緑色で毛はなく、裏面は白い毛が密生し白く見えます。区内で見られるカラムシと同じ仲間には、ヤブマオ、コアカソ、ラセイタソウ等数種がありますが、お互いに雑種を作り区別が難しくなりました。
次回は「カヤ」の予定です。
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