かつては、「仰げば尊し」や「蛍の光」といった唱歌が卒業式で歌われる合唱曲の定番として親しまれてきたが、現代はどのような楽曲が歌われているのだろうか。本紙では港南区内の全小学校を対象にアンケート調査を実施し、その傾向を探った。
小学校生活の思い出や別れの言葉を、卒業生や列席する在校生が一人ひとり順番に読み上げる卒業式のプログラム「呼びかけ」。
その合間に行われる合唱の曲目や曲数は学校により様々であるなか、区内の小学校全21校中18校が卒業式で歌うと回答したのが「旅立ちの日に」。中京大学文化科学研究所準職員の田中克己氏が全国の小学校を対象に行った同様の調査(平成12年度から16年度)で、同曲は「巣立ちの歌」に次いで2番目に多く歌われており、区内でもその傾向が現れる結果となった。
その一方、学校独自に歌い継がれている曲も。港南台第三小学校では7年程前から当時の担任の希望により「栄光の架橋」を歌うようになった。人気歌手の曲で耳覚えがある保護者も多いため、今では毎年、参列者も含めた全員で歌うのだという。
また、上大岡小学校では、オペレッタ形式で歌い上げる「卒業式の歌」が長年受け継がれているという。
地域と祝う卒業式
全員で歌う「ふるさと」「仰げば尊し」
合唱曲の選曲方法については、「児童にどのような曲を歌いたいか希望を取り、合唱として卒業式に歌えるかを教師が判断する」「教師が提示した候補曲のなかから、6年生児童が全員で決定する」などの回答が多く見られた。
また、選曲理由としては、教師側が選ぶ場合には「学習内容に沿ったもの」「歌詞や曲調が卒業式の趣旨にあっているもの」が多く、児童が選ぶ場合には、前年の卒業式に参列して聞いた曲を選ぶケースも珍しくないという。
一方、式場全体で卒業生を祝う一体感を得ることを目的に、幅広い世代が知る曲を選ぶ学校もある。
たとえば、桜岡小学校では式の最後に参列者を含めた全員で唱歌「ふるさと」を、また日野小学校では、「地域から参列する来賓と共に歌える」との理由から、「仰げば尊し」を歌っているという。
歌いたい楽曲が最良
明治文化史や唱歌を専門に研究している田中氏によると、「仰げば尊し」が卒業式で初めて歌われたのは明治18年。音楽取調所(東京芸術大学の前身)で執り行われた第1回卒業演習会の場だった。以来、昭和50年前後まで卒業式の定番として歌われていたという。
現在は選曲にあたって、卒業生の希望を取りいれる学校が多く、その曲目も戦後に作曲された楽曲を中心に様変わりした。
田中氏はこれについて、卒業式はあくまでも学校儀式の1つとして行われるものとし、「厳粛な雰囲気を壊すような楽曲は好ましくないと思われる。また、保護 者と一緒に歌えるものが望ましいのでは」と語る。そのうえで、「積極的に歌いたい楽曲があれば、それを歌うことが最良」と話していた。
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