思春期を迎える小学6年生を対象に、子育ての大変さや家族と自分自身の存在、命の重みを学ぶことを目的とした「赤ちゃんふれあい授業」を、港南区地域子育て支援拠点「はっち」と、吉原小学校が協働で2012年度から取り組んでいる。今年は11月6日、12日、19日の3日間で実施された。
この取り組みは、同拠点を運営するNPO法人「ちゅーりっぷ」の渡辺ひとみ理事長と、同小6年家庭科専科の岡田広江教諭の提案が重なり始まったもの。
横浜市が13年度に行った妊娠中、出産後の女性へのアンケート調査によると、第1子の誕生までに乳児の世話をしたことがない人は74・1%と高い割合を示す。さらに妊娠中から「育児に不安を感じる」人は56・5%、出産後半年では74・6%に及ぶ。渡辺理事長は拠点開所後間もなく、育児不安を訴える母親が多い現状から、次世代育成の目的で同授業の必要性を行政に提案してきた。「子どもたちが親になったとき不安なく子育てできるように、記憶の残る思春期に赤ちゃんを抱っこして、命の重みや存在を知ってほしい。児童虐待が増える中、今後の虐待防止策としても必要」と話す。
授業では6年生104人がクラスごとに、はっちを訪問。拠点の役割などについてスタッフから説明を受けた後、赤ちゃんの身体や生活習慣、離乳食などの発達段階を学び「ふれあいタイム」として拠点を利用する乳幼児親子と交流した。
交流では児童が赤ちゃんを実際に抱っこしたほか、児童から母親に子育ての大変さや喜びをインタビュー。また「親体験」として児童が赤ちゃん人形とマザーズバッグ、ベビーカーを同時に持ち、重さを体感し、子育ての大変さを学んだ。最後は、児童から歌や合奏が親子にプレゼントされた。
授業後、児童からは「赤ちゃんが本当に小さくてかわいかった」「家でお母さんの手伝いをしたい」「親になったときまで覚えていたい」などの声が聞かれた。
また、児童と交流した母親からは「わが子の12年後の姿を想像して、今の赤ちゃん時代を大切にしたいと思った」「暗いニュースが毎日ある中で産まれてきてくれ、育てさせてくれて子どもに感謝したい」と話していた。
岡田教諭は「実際に子育て中の母親から話を聞くことで、自分もこうやって成長してきたのだと気付くことが後に必要」とこの授業を小学6年生が行う重要性について強調する。
行政 接点増やし虐待抑止へ
市内で13年度に新たに把握された児童虐待件数は1159件と過去最多。11月には「横浜市子供を虐待から守る条例」が施行された。
虐待の原因に育児不安もあることから、市では母子手帳交付時から誕生直後の新生児訪問や健診などで、早期発見に努める。
区こども家庭支援課の担当者によれば「健診の場で育児不安を見つけ出すケースが増えている」とし、「母親1人への負担が大きいことがほとんど。今後も親と行政との接点を増やしていきたい」と話している。
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