県下最大規模の公募美術展「神奈川県美術展」で、南区在住の遠藤菜々子さん(21)が工芸部門で特選、西区在住の石渡延次さん(76)が写真部門のかながわ賞を受賞した。2人の作品は神奈川県民ホールギャラリー=中区山下町=で9月18日(水)から29日(日)まで展示される。
遠藤さんは現在、多摩美術大学に通う大学3年生。昨年、学校の課題で制作した染織作品「私から見た昆虫図鑑」で工芸部門172作品の中から大賞、準大賞に続く特選を受賞した。昆虫の形や色の面白さに惹かれた遠藤さんは、「友人には気持ち悪いと言われる虫をかわいくデフォルメしよう」と制作を始めた。溶かしたろうを筆で生地に塗り、その部分が染まらないようにする「ろうけつ染め」で色を重ね、一見絵画にも見える緻密な作品に仕上げた。
染織について「滲んでしまったり、思った色にならないことも。でもそれが意外と良かったり、思いがけないことが起こるのが面白い」と語る。電話で受賞を聞き、「始めは実感が湧かず、翌日のバイト中もボーっとしてしまった」という。「いつかはアーティストとしてやっていけたら」と未来の自分に思いを馳せる。
石渡さんは写真部門511作品の中からかながわ賞に選ばれた。中区にある行きつけのライブハウスとバーの店で撮影した3枚の組写真「ダンスホール」で念願の受賞を手にした。
中学生の時にカメラをもらい、そこから趣味で撮り続けてきた。同美術展には50代のころから毎年のように応募しており、3回ほど入選したことも。「今年はやめようと思っていたが、写真が語ってくれるものに勇気づけられて応募を決めた」という。コンパクトカメラで撮影した作品は、踊る女性のぐっと伸びた腕やその瞬間の表情が切り取られた躍動感のある作品に。「余生をどう生きていくか。今後もカメラは続けていきたい」と語った。
18日から展示
同美術展は新進作家の育成などを目的に1965年から続いている。今年は平面・立体・工芸・書の4部門に県内外から864人、1272作品が集まった。
現在、神奈川県民ホールギャラリーでは、入賞・入選作品による展覧会を開催している。15日(日)までは平面立体、18日(水)から29日(日)までは工芸・書・写真の作品を展示する。午前10時から午後5時(15日・29日は2時)まで。入場無料。
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