〈連載〉さすらいヨコハマ⑭ 丘の上の女学校 大衆文化評論家 指田 文夫
日本には「高校などの学校は小高い丘の上」という思いがある。また、「私は上野の山を出ましてね…」と芸大出身を誇るように、芸術施設も丘の上にあるようだ。横浜の県立、市立図書館はともに丘にあり、特に県立は急坂の紅葉坂で、高齢者や障害者は大変に行きにくい。だが、ほぼ平地の欧米もそうだが、南米の丘の上は、貧困な人が住む環境の悪いスラムであることが多く、ブラジルではファベーラと言われている。
横浜ではフェリス女学院、横浜共立学園、横浜雙葉、横浜女学院とキリスト系女学校は今も山手にある。これは、元が外国人居留地での外国人私塾に発しているからである。磯子区岡村の横浜学園、蒔田の横浜英和学院、神奈川区の捜真女学院も昔は山手にあり、有島武郎の『一房の葡萄』は、山手当時の横浜英和での出来事である。
私塾というのも、公教育が強い日本では理解しにくいが、米国の私立中学校が舞台の映画にオードリー・ヘップバーン主演の『噂の二人』がある。原作はリリアン・ヘルマンの戯曲『子狐たち』で、主題は1950年代の「赤狩り」への強い批判だが、米国の私塾教育が分かる傑作である。
(文中敬称略)
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