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横浜国立大学 稀代の名器 音色蘇る 修理費出資者集め演奏会

文化

掲載号:2019年6月13日号

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 横浜国立大学(長谷部勇一学長)が大正時代から所有しているドイツ製のグランドピアノの修理が終了し、6月上旬にお披露目演奏会が開かれた。音色の復活へ向けインターネット上で賛同者を募る仕組みクラウドファンディング(CF)での出資者らを招いたこの日の演奏会では、同大学教育学部音楽教育講座で講師を務めるピアニスト・森野かおりさんが悠久の音色を奏でた。

 ピアノは同大学の前身となる横浜高等工業学校が開校して間もない1924年に当時の鈴木達治校長が学生の課外活動用にと7千円で購入した。ドイツ・ベヒシュタイン社製のグランドピアノで、現在の貨幣価値に換算すると4千万円から5千万円ほどとなる。当時、国内では東京音楽学校(現在の東京芸術大学)と首相官邸にしかなかったという名器だ。

数奇の運命

 およそ1世紀に渡り音色を奏でてきた名器は激動の時を過ごしてきた歴史を持つ。戦時中、戦災は逃れたものの、終戦直後に進駐軍に接収され東京・丸の内の米軍将校クラブで使われていた。教授を通じて連合国軍総司令部(GHQ)に返還を求め、47年に横浜の地に戻った。

 翌年には収納されていた講堂で火災が発生。講堂は全焼したものの、近くの寮生らが担ぎ出し焼失の危機を免れたという。その後、大学紛争に巻き込まれ、大学の移転統合などもあり、稀代の名器の存在はいつしか「忘れられた存在」となった。

 工学部の会議室に放置された1台のピアノを教員が発見したのは88年。その後、卒業生らが復元へ向けた動きを加速させ98年に大掛かりな修理が施され、大学内にある教育文化ホールに記念保存・展示すると共に、音色を鑑賞する機会が設けられてきた。

多額の修理費

 修理から20年の歳月が経ち、本来の音色を奏でることが難しくなってきたことから、大学は専門業者に調査を依頼。多額の修理費用を捻出する事は難しく、たどり着いたのがCFだった。プロジェクト開始から1カ月ほどで目標額としていた130万円を突破。最終的には取り組みに賛同した256人から287万5千円の寄付が集まった。

涙浮かべ聞き入る

 出資者らおよそ120人を招き今月上旬に開かれたお披露目演奏会で悠久の音色を奏でた森野さんは講師に着任した当時、公開講座でこのピアノに初めて触れたという。「数奇の運命を辿った歴史あるピアノだが正直驚いた」と状態の悪かった当時の名器の印象を振り返り、「よくここまで生き延びたという印象だったが、今回、多くの方々からご支援をいただき生まれ変わった」と話し、職人が手を施した稀代の名器でショパン作曲の「ノクターン作品9―2」など8曲を披露。来場者の中には涙を浮かべながら蘇ったその音色に聞き入る人の姿も見られた。

 出資者のひとりで同大音楽科の卒業生・伊藤敦子さん(釜台町在住)は「学生時代にはピアノの存在は知らなかった。今回のプロジェクトを知り母校のためになれればと協力させていただいた。素敵な音色を末永く残していくことができれば嬉しい」と話した。

 同大によると今後、地域向けの演奏会なども計画していく予定があるという。
 

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