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鶴見区 社会

公開日:2025.07.17

「横浜が見た戦争」演じる
生きている大切さ伝える

  • 上演に向けて稽古する五大さん

 「横浜から発信を!」を掲げ、横浜を題材にした作品を演じる「横浜夢座」。今年は1年を通し「横浜夢座 戦後80年平和祈念三部作」を上演している。座長は港北区在住で、俳優の五大路子さん。五大さんは「横浜が体験した戦争を、そして、そこに生きた人々の命を、今を生きている人たちに発信していきたい」と力強く語る。

 第一弾は5月17日に行われた「奇跡の歌姫『渡辺はま子』」。戦前から戦後に活躍した歌手・渡辺はま子さんが「あゝモンテンルパの夜は更けて」という曲を通し、戦後フィリピンに捕虜として取り残されたBC級戦犯108人を救う実話。

 生涯横浜で過ごした渡辺はま子さんのことを調べるうち、戦争に行き着いたという五大さん。舞台のため、モンテンルパ刑務所に収監された元日本兵の戦犯とその家族による「モンテンルパの会」に対面や文通で取材。五大さんは「戦後、日本が繁栄に向かう一方、戦争責任を負わされ、死刑宣告を受け、独房で待っていた人たちがいたことに驚いた」と話す。戦犯死刑囚で、同曲の作詞を手掛けた代田銀太郎さんからの「もうすぐ俺らはいなくなる。でもあなたは、横浜夢座は、このことを語り伝えてくれますよね」の言葉を胸に、演じ続けている。

 第二弾は7月8日まで横浜赤レンガ倉庫ホールで上演された「横浜ローザ」。モデルは戦後、横浜の街角で娼婦として生きた”メリーさん”。メリーさんが通ったであろう化粧品店やクリーニング店などを訪れ、足跡を辿った。どんな生活を送ったのか、なぜ白塗りなのかなど、謎を解いた先にあったのが「戦争」だった。戦後、伊勢崎町にあった米軍の飛行場から米兵が出てくる場所に女性たちが立っていたことを知る。「死者数などの記録は残っているが、この街の人たちがどう生きたのかは、彼女と出会って調べるうちにわかった」と話す。「見えていなかったものが見えて身震いするようなものを感じた」。自分自身が見たもの、感じたことを舞台で表現した。

 第三弾は9月に杉田劇場で上演予定の朗読劇「真昼の夕焼け」。作品は横浜大空襲当時15歳だった筧槇二さんの実話を元に、爆撃機が投下する焼夷弾から命懸けで逃げる少年らの様子を、言葉と音楽で描いている。10年ほど前から市内小中学校、高校でも演じられており、作品を鑑賞した子どもの人数は今秋に1万人に達するという。五大さんは「戦争を知らない子どもたちだが、語ったことが心に残り広がっていく」と口にする。

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