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鶴見区 社会

公開日:2025.09.11

自殺予防週間
家族の死をどう受け入れるか
自死遺族に聞く後悔と立ち直り

  • 仰木さん(右)と娘さんで撮った最後の写真

 9月10日から16日は「自殺予防週間」。国内での自殺者数は近年減少傾向にあるものの、2024年でも2万人以上が自ら命を絶っている。

 命を絶つほど苦しんだ本人はもちろん、身内を亡くした遺族も苦しみと後悔の念を抱き続けてしまうもの。今回は、自死遺族に当時の思いや、立ち直りのきっかけなどを聞いた。

 仰木奈那子さん(筆名・75)は10年前に娘を32歳の若さで亡くし、その思いを短歌を詠んで歌集として出版もした。

 「娘は麻酔科専門医として務めながら大学院での研究も夜遅くまで続ける毎日で、自死までの1年半に一日の休みもなくうつ病を発症していました。死の前日に私に電話口で『逃げ出したい、もう嫌だ』と泣き叫びました。でも、私は元気づける意味で『そんなこと言ってどうするの』と怒鳴りつけてしまいました。翌日に謝ろうと電話をしても繋がらず、心配になって娘の家に駆けつけたら…。頭ごなしに怒鳴りつけ、謝ることができないまま死に別れてしまったことが悔やまれて仕方なく、ずっと自分を責め続けました」

 「娘を亡くして憔悴する私に、多くの方が声をかけてくれました。優しいお言葉も最初は何も受け入れられませんでした。でも、自死遺族向けの電話相談で、同じ苦しみを体験した相談員さんから『苦しみは1、2年は続くので自由に悲しんでください』『苦しみや悲しみは乗り越えられるものではなく、月日が経つうちに上手に付き合っていけるようになる』とお聞きし、私もそのように生きていかねばと思いました。同じ体験をしているからこそ、真の理解者として信用していました。特に、私が娘の死後にうつ病の薬の副作用で歩けなくなってからは、電話相談が唯一社会と繋がる手段でした」

 ――娘さんの死を受け入れられたきっかけは?

 「短歌を詠むことが娘へのお詫びと感謝を伝える唯一の手段でした。心の中で娘と向き合う日々で1年が経った頃、自宅の階段から転落した際に幸運にも軽い怪我で済み『娘に守られている』と感じました。このままではいけない。娘が患者さんの命を救うことに懸命だったので、私も人さまの役に立たねばと県の要約筆記者の資格を取り、今は傾聴ボランティアの会に所属しています」

 ――現在、同じような苦しみを抱く自死遺族にメッセージを

 「私は電話相談の方々に助けて頂きました。安心して本音を語れますので、ぜひ勇気を持って電話してみてください」

 横浜市は専門の相談員に匿名で話せる電話窓口を設置している。自死遺族ホットライン【電話】045・226・5151(毎月第1・3水曜午前10時から午後3時)。

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