連載寄稿 イルカ博士の生命感動日記 ㉑花は看るものです
「花は見るものではなく、看るものです」――。園芸家・江尻光一氏は色紙にこんなことを書いています。
看るというのは目の上に手をかざし、相手と自分が一緒になるという意味。目の下に人がいる「見る」という意味とは、大変異なっているのです。
横浜には神奈川区をはじめ、すてきな花壇が多くあります。一歩足を踏み入れると、ほんのりと漂う花の香り。こうした公園の管理は市が行っていますが、草花の隅々までは目が届きません。公園の近くに住んでいる、花の好きな人たちが自然と集まって草花を育てているとか。今では、ハーブや草花が四季に合わせて植えられ、リラックスできる憩いの場所が実現しています。散歩に来る人たちも、ゴミを見つけると自主的に拾って持ち帰るようになっているようです。
人々が植物への思いやりと美しさを共有しあってこそ、憩いの場所が自宅の庭のように安心できる「心の空間」となると思います。草花を愛する小さな活動が、地域の暮らしを豊かにし、こうした人の輪がまた、公園を美しくしていく…という恵まれた住環境が持続して維持されるようです。
植物がスクスクと育つ姿は「理科」の分野ですが、学ぶべきことは知識ではありません。植物は生きものです。同じ生物に手を重ねあい・理解していくことこそ大切だと思います。
桜から皐月の花へとバトンタッチ。子どもたちに「お花を見に行こう」と声をかけられたら、こんな言葉を励みに、草花を「看る」という意味をよく考えて、もう一度区内の身近な公園を見直してみたいものです。
【日本ウエルネススポーツ大学特任教授・岩重慶一
(問)【メール】iwashige@gmail.com】
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