北見方町会 江戸期の道標、45年ぶり「帰郷」 住民の手で歴史遺産を保存
江戸時代後期から人々の往来を見守り続けてきた「歴史遺産」が北見方にある。川崎と八王子の分岐を伝える石造りの「道標」だ。多摩区民家園に寄贈されたが、北見方町会が昨年、45年ぶりに元来の地に戻した。移設を実現した町会長らの奮闘に、地域の歴史伝承への切願が垣間見える。
旅人の道中安全を願った「先人の気持ちを偲んでもらいたい」。北見方町会長の吉田豊さんが、いとおしむように道標の肌に手を触れた。高さ83センチの石柱の脇には「村内安全」と彫られた地神塔、無病息災を祈念した馬頭観音塔など5種の石塔が居並ぶ。いずれも1743年から1882年までに建立。風化した石表面に、200年におよぶ歴史が刻まれている。
1799年の製造というこの歴史遺産。区内最古の道標とみられ、当時この場所は伊勢原の大山参りに向かう要衝だったという。
1966年、同町会の初代会長が民家園に道標を寄贈。7年ほど前に同園を訪れた吉田さんは、地域の絆を深めるきっかけにしたいと返還を着想した。町会役員と協議し、工費を町会が負担する移設計画を本格始動した。
住民の手で移設したいと、吉田さんは自ら工事用図面を制作。新設した表示板上の石碑群の解説文も執筆した。役所からの、市道の一部専有などの許認可取得に苦心しながらも、認可申請から約4カ月後の昨年6月、移設が完了した。
資料提供などで協力した郷土史家・鈴木穆さんに感謝を示す吉田さん。「(保存活動を地域で)代々引き継いでもらいたい」。充実感が声ににじむ。
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3月29日