多摩区・麻生区 人物風土記
公開日:2025.10.03
創立40周年の特別展を開催する麻生区美術家協会の会長を務める
三村 修一さん
麻生区王禅寺西在住 77歳
情熱胸に ふるさと刻む
○…絵画や彫刻、工芸などジャンルや会派を超えて集い、活動する麻生区美術家協会。会長として40周年の節目の特別展に臨む。「ふるさと麻生を描く」のテーマに沿い、自身が手がけたのは日課の散歩の途中、地元の真福寺川で見かけたサワガニと水の流れをモチーフにした彫刻作品。「作家はみんな思いがあって表現する。どんな思いを持って麻生の風景を描くのか、とても楽しみ」と期待を寄せる。
○…創作のルーツは故郷の福岡県飯塚市にある。筑豊炭田の一角、炭鉱のまちで育った少年時代。選炭後に残った石や質の悪い石炭は「ボタ」と呼ばれ、廃棄場から拾って帰ると、父が彫って作品に仕立てるのが常だった。「自分では作らなかったけど、その姿を見てたからかな」。大学では教育学部で美術を専攻し彫刻に没頭。教員として勤める中でも創作意欲はやまず、毎年作品を生み出してきた。
○…定年後は新設された学科の非常勤講師として10年、大学で教鞭を取った。「造形の基本や授業のやり方まで。学生たちに思いをぶつけるのは楽しかった」。市の寺子屋事業で行う、自然素材を使った造形のワークショップは子どもたちから力をもらう貴重なひと時だ。「みんな一生懸命で夢中になっていい作品を作る。見ていてうれしい」と目を細める。「材料が足りなくなったらいけないから準備は大変だけど、幸せな時間」
○…木々に囲まれ風が通る自宅の縁側はアトリエであり居場所。「気づくと日が暮れている」と話すほど今も彫刻に夢中だ。時には庭木のびわや桃でジャムを手づくり。遊びに来る孫が何か作れるようにと、素材を用意するのも忘れない。「まだまだ作りたい。等身の作品も作れたら」と少年のような笑顔を見せた。
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