30年間、殿町小学校の児童に地場産業「ノリすき」を伝え続ける 石渡 美由喜さん 殿町在住 73歳
何事にもトコトン熱中
○…「田んぼのあぜ道にノリがずらっと干されていて。あの頃、小学校の周りはのどかな農村でした」。約60年前の殿町の様子をそう振り返る。大師地区でのノリ漁最盛期は昭和中期頃まで。当時を知る人は、地元にも少なくなった。30年前、殿町小学校での「ノリつけ」体験授業を始めたのは、地場産業の体験を通じ、かつての殿町の風景を子ども達に伝えたかったからだ。最近では体験授業の後に、座学で郷土史も教えている。工業地帯としての歴史の印象が強い臨海部だが「それ以前には素晴らしい自然があったのだと知ってほしい」と力を込める。
○…殿町出身。一人息子が殿町小学校に通っていた1980年ごろ、偶然実家でノリ生産に使用する道具や農機具、民具を発見した。郷土史の授業で役立ててもらおうと、一式を小学校に寄贈。それらを解説付きで保存する「郷土資料室」の整備にも携わった。さらに「せっかく道具があるのなら」と知り合いの元ノリ漁師らに講師を頼んで回り、85年、昔ながらのやり方で「ノリすき」を教える体験授業を開いた。以来毎年12月、実施し続けている。
○…一度手を付けた物事には、トコトン取り組まないと気が済まない性格。最近熱中している「つるし雛」作りの技術は、電車を乗り継いで埼玉県富士見市まで2時間かけて毎月通い、6年かけて磨いたもの。45年ほど前に始めた水墨画では現在も弟子を20人持ち、一門の作品展も定期的に開催してきた。自宅に友達を集めて週に一回開くカラオケ大会が息抜きだ。
○…30年間指導を続けてきた力の源は、子ども達の喜ぶ姿。校庭に干した生ノリが、昼休みにパチパチと音を立てると、子ども達が集まってくる。「お日様ってすごいな、って嬉しそうに笑ったり。これからもノリ養殖を伝えていきたいと思える瞬間です」と目を細める。指導者として後を継いでくれる人を育てるのが、現在の目標だ。
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4月12日
4月5日