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港北区 人物風土記

公開日:2025.12.18

菊名の出版社・三輪舎代表で港北地域学講座で講師を務める
中岡 祐介さん
大豆戸町在住 43歳

 ○…菊名に出版社「三輪舎」を構え、隣駅の妙蓮寺では「本屋・生活綴方」を主宰。「住むまちで本を出す」を地で行く編集者だ。1月に開催される地域学講座では、その活動の根幹を語る講師も務める。「仕事と生活は分けられないもの」。商店街の店主たちと挨拶を交わし、まちの風景の一部として暮らす。今日も誰かの人生に寄り添う一冊を編んでいる。

 ○…仕事の流儀は「企画ありきではなく、人ありき」。原稿の持ち込みは断る。文章の巧拙よりも「この人と関わりたいか」。現在、岩手県に住む男子中学生と本を作る準備中だ。出会ったのは彼が小学生の頃。不登校だったが、交わす手紙の言葉が抜群に面白かった。「学校に行かないことは、悪いことじゃない。その『行かない世界』で何が行われているのか、彼が見ている景色を知りたくて」。書き手が生業かどうかなんて関係ない。ただ人の言葉をすくい上げ、本にする。

 ○…妙蓮寺の書店には簡易印刷機「リソグラフ」を置き、誰もが本を作れる環境を整えた。「この街が面白いから」と、自身の誘いで近所に移り住み、店で本作りを始めた作家もいる。手製本の冊子から始まり、やがて商業出版として多くの読者に届くこともあった。「生活者の実感がこもった本は、確実に届く」

 ○…かつては書店などを運営する企業のサラリーマン。転機は31歳。筑波山の山頂付近で、謎の横笛を吹く老人と遭遇した。「その姿を見て音を聴いて、『あ、もう山を下りよう』って」会社を辞めた。翌年、三輪舎を創業。社名には、三輪車のようにゆっくりでも、倒れずに進むという意味を込めた。息抜きは菊名池公園。「池を眺めてぼーっとするのが好き」。自分らしい速度で、このまちを歩む。

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