川崎球場を懐古するイベントが先月28日、富士見の富士通スタジアム川崎で開かれた。訪れた約1000人の野球ファンがトークショーや特設ギャラリー、スタジアムツアーなどで当時を懐かしんだ。
「10・19を中心に川崎球場の歴史を振り返る」と銘打ったイベントは「富士通スタジアムを世代と世代をつなぐ場所として長く愛してもらいたい」との願いを込め、同スタジアムが企画した。
イベントは、プロ野球ファンの間で語り草となっている88年10月19日のロッテオリオンズ対近鉄バファローズのダブルヘッダー「10・19」をトークショーで振り返ったほか、川崎球場の面影が残る史跡を巡るスタジアムツアーや川崎球場にまつわる写真や書籍を展示した特設ギャラリー、川崎球場時代の名物肉うどんやパインジュースの復刻販売などで当時を懐かしんだ。
トークショーではニッポン放送の松本秀夫アナウンサーが司会を務め、88年当時ロッテの中心選手だった高沢秀昭さん、同球団で中距離打者として活躍した堀幸一さんらゲスト出演し、秘話を語った。
高沢さんは10・19について「(近鉄は優勝がかかる試合だったがロッテは最下位が決まっていたため)なかなかモチベーションが上がらなかった。球場のムードで次第にヒートアップした」と振り返った。
当時のラジオ放送の音源も公開。10・19では緊迫するゲームの最中、阪急ブレーブスのオリックスへの身売りが決まったニュースが速報として入ってきたシーンが流され、パ・リーグの歴史的な一日だったことをファンは改めて噛みしめた様子だった。
堀さんは川崎球場の思い出を語り「狭い球場で打者としては嬉しかった」と述べ、同球場ならではのホームランの打ち方があった話を披露。同球団のエース投手だった村田兆治さんがバッティングピッチャーを買ってくれた話では「最初は気持ちよく打たせてくれたが、次第に本気になって抑えにきた」というエピソードを披露した。
懐かしのユニ姿ファン集結
当時の川崎球場は閑古鳥が鳴いており、トークショーでは数十人しか観客が入らなかったことも語られた。松本アナウンサーは実況の声が観客席まで響き、カウントを間違えると観客からツッコまれたといった話を披露すると会場は笑いに包まれた。
高沢さんは試合前、ユニホーム姿で球場に開設されたラーメン屋で食事をしたことや「関西の球場に行った際、その球場を本拠地とするチームの選手のつけとして食事をしていた」といった秘話を明かした。
同スタジアムによると、この日は朝から長蛇の列ができ、約1000人が訪れたという。
会場内ではロッテや近鉄のほか、往年の阪急、南海ホークス、日本ハムファイターズ、西武ライオンズのユニホームを着用してイベントを楽しむ人の姿も見かけられた。
阪急の応援団を長年務め、川崎球場を頻繁に訪れていたというノンフィクションライターの田中正恭さんは「選手たちが球場のラーメン屋で食事をした光景を覚えている。当時のパ・リーグは選手とファンの距離が近くアットホームだった」としみじみ語った。
近鉄ファンで10・19を生で観戦したという中原区在住の中村紀子さんは「(イベントを通じて)当時の思い出が甦った。こうした催しを定期的に行ってもらいたい。できれば近鉄サイドの視点からもぜひ取り組んでもらえれば」と期待を寄せた。
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