東林間神社・第9代目総代長 古木 益美左(ますひさ)さん 南区上鶴間在住 78歳
境内いっぱい“福よ、来い”
○…「東林間には最初、5つの家(家族)があったんだよ」。確かにそれは、大正9年当時を描いた絵画にも明記されている。「中村新開(しんかい)」と称されていたこの地に鍬(くわ)が入れられてから、今年で123年。「五軒家(ごけんや)」と呼ばれていたその先駆者らの末裔(まつえい)の1人が船頭(せんどう)となり、今年も境内に節分の福をもたらしてくれる。神社の2月3日の恒例行事だ。
○…駅そばの東芝林間病院の南西側に屋敷の敷地があった(駅南側、スーパー三和のあたり)。昭和4年、小田急江ノ島線開通によって土地は分断。家のすぐ隣を電車が行き来した。農作業に勤しみ、庭を見遣(みや)れば、炭焼きの土窯(どがま)がもくもくと煙を上げている。相模原のほかの地でも当たり前だった光景だが、今では幾多の土地の買収や区画整理でなくなった。「小さい時は、家の敷地内に稲荷(いなり)もあったんだ」。流石に、地域の守り神を失うのはためらわれた。代替地に小さな社が作られ、修行先で培った自分の技術で鳥居を創建。現在、東林間神社があるところこそが、その稲荷が新しく鎮座(ちんざ)している場所である。
○…趣味は10代のときから始めたゴルフ。今でも、月に4回ほどラウンドへ。実は、この地域の若人らの“密かな楽しみ”だった。遊び場は、東海大相模高校の裏手にある「相模カンツリー倶楽部」(大和市)。周囲で、ゴルフ場に勤務する大人も多かった。「この辺の子どもは、みんなキャディーもやらせてもらって。いいお小遣い稼ぎになった」。まだ終戦まもない話だ。
○…自ら創業した建設会社の社長を退いたのが、およそ5年前。それでも、「意外と忙しくてさ」。改めて、神社にまつわる歴史を再整理している。「初詣はね、神社の外にも長蛇ができるほどだったんだよ」。初代総代長を勤め上げた父。甦るかつての思い出に、誇らしく目を細める。“鬼は外、福は内”。今年もたくさんの人と祈願できることを、心待ちにしている。
|
|
|
|
|
|