「新磯ざる菊愛好会」の会長を務める 藤曲(ふじまがり)和美(かずみ)さん 磯部在住 68歳
愛情込めて花や牛を育む
○…「そんなことわかんねえや」。やや素っ気ない返答。しかし、その眼は優しい。”しょうがねえな”と言いながらも、なんだかんだしっかり面倒を見てくれる人だ、そんな気がしてくる。ざる菊しかり、約30頭の乳牛しかり、同じような眼差しで日々の世話をしている姿が目に浮かぶ。
○…代々磯部の地に根付く家の長男で、父の代から牧場を経営している。相原高校卒業後、「いきなり農業はしたくない」と5年ほど地元企業に勤務。”タイムカード”のおかげで、時間厳守の習慣が身に付いたそう。その後畜産業に入ると、牛の体型や生産性などの改良に注力。「牛の美人コンテスト」と言われる畜産共進会(品評会)に参加し、県や中部日本地域などで優秀な成績を収めた。良血統を求め、海外にまで買い付けに行くなど気を張り続けた賞レース。獲得したトロフィーは、自宅に所狭しと並ぶ。そんな共進会も10年ほど前に引退。現在はのんびりと牛たちを育てている。
○…「大勢が『わあ、きれい』と、会場で第一声を上げてくれる。あの声は会員にとってはうれしい限り」。5年前から栽培を続けるざる菊は、地域、行政、農協、観光協会など様々な人々を巻き込みながら年々盛り上がりを見せ、このたび全国区の表彰を受けるまでに。「会員だけでなく、近隣のご婦人たちの協力もあってのこと。携わっている人たちに感謝したい」と、しみじみと語る。
○…「牛の飼育はきつい仕事」と顔をしかめるも、「長いことやりゃあ愛着もわく」と苦笑い。朝5時から夜7時すぎまで、生き物相手の仕事に休む暇はない。3人の息子は独立、現在は妻と2人暮らし。仕事柄、なかなか夫婦水入らずの外出はできないが、仲間とたまに行く旅行や近所に住む3人の孫とのひと時が息抜きとなっている。ざる菊を前にし、「赤はビロードみたいですごくきれいなんだよ」と自分の子どものことのように嬉しそうに話した。
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