「永らく平和な日本に暮らす私たち、その平和を維持していくのには私たちはどのような努力をしていったら良いのでしょうか」
自著でそう語りかけるのは新町幼稚園(相原)の理事長を務める浜野和子さん(81)。浜野さんは昨年、「見捨てられた戦場」を出版。太平洋戦争でニューギニアに派遣され過酷な戦場で傷つき、病み、飢えに苦しみ、死を待つ日本兵の実話を物語にした。
物語のベースとなるのは戦争体験者の話。浜野さんが聞いた話では、本の舞台となるニューギニアでは食糧が不足し、戦いで命を落とすより餓死で亡くなる人の方が多かったという。「制空権を握られて食糧を載せた飛行機は撃ち落とされ、食糧庫は爆撃され、食べ物はほとんどなかったそう」。そんな状態の中で、兵士の救いとなったのが昔話や民話だったという。浜野さんは「古くから語り継がれてきた物語には、人生に役立つ教訓が含まれている。それを幼い時から子どもたちにたくさん読んであげてほしい。社会へと巣立ち、窮地の時に役立つように。平和の尊さはもちろん、戦場でも失わなかった温かい人間らしさ、言葉の持つ力をこの本で伝えたい」と力を込める。
「考えてほしい」
浜野さんは1940年生まれ。頭の片隅に戦争の記憶が残っている。「とにかくお腹が空いていた。油を絞ったあとの大豆、さつまいも、カボチャを食べた記憶があるけど、美味しくないの」と思い出す。「そんな時代に生まれたから、米一粒でもムダにしないよう教えられた。今でも食べ物は粗末にできない。食品の廃棄などが騒がれるけど、世界には飢えに苦しむ人がたくさんいる。これで良いのかと考えさせられる」と話す。
同著は幅広い年代に向けて書かれているが、「特に小学校高学年から中学生の若い世代に読んで欲しい」と言い、「当時の人たちは平和を願って命懸けで戦った。その人たちに思いを馳せて、自分の生き方を考えてみてほしい」と話す。
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