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八王子 社会

公開日:2025.08.28

布屋パン(旭町)
109年の歴史に幕
機材の老朽化と高齢化で

  • 別府社長(左)と長年営業を支えた従業員たち

  • 趣を感じさせる店頭

 1916(大正5)年に創業し、戦争やコロナ禍を乗り越えてきた老舗ベーカリー「布屋パン」が、8月25日で109年の歴史に幕を閉じた。

 店舗は、JR八王子駅北口の西放射線ユーロードから一本路地に入ったところにある。棚にはジャムバターコッペパン、メロンパン、小倉あんぱんに食パン…昔懐かしい手づくりのパンが並ぶ。

 3代目社長を務めたのは、別府晴美さん(79)。パンをつくるための機材の老朽化が進み、「自分も年を重ね、店を続けていくのが難しくなった」と閉店理由を打ち明けた。

 別府社長によると、もともとはこの場所から少し離れたところに店を構え、まんじゅう屋として開店したのだという。45(昭和20)年8月2日未明に起こった八王子空襲の被害にも遭うが、先々代らが一丸となって再建。街の人たちに愛され、布屋パンは地域に根差した人気店へと成長していった。

コロナで様相変わり

 しかし、「コロナでだいぶ街が様変わりした」と別府社長は転機を語った。30〜40年前は、「午後5時を過ぎると、仕事を終えて帰るために八王子駅へ向かう人たちがウィンドウ越しによく見えた。一杯ひっかけて帰る人もね」と当時を回想する。「最近はどこも『リモート』でしょ」。時代の変化によって街の人の波が減ったことをさびしげにつぶやいた。

 昨今は、原材料費の高騰も店を苦しめた。砂糖やバター、パンづくりにかかわるありとあらゆるものが値上がりし、「一昨年、去年とパンの価格を値上げせざるを得なかった」という。

 今夏に入り「閉店のお知らせ」を店頭に掲示してからというもの、客足はどっと増えたという。「常連客などがSNSで拡散してくれたらしく、数十年前に来ていたお客様や、帰省で帰ってきたお客様が覗きに来てくれたり」と目を細める。「本当にお客様に育てられてきた店だと思いました」と感謝を口にした。

 30年ほど前に同店の近隣で働いており、何度か利用したことのある80代の女性は「100年以上続くなんて夢のようにすごいこと。なくなるなんてさびしくなる」と閉店を惜しんだ。

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