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多摩 社会

公開日:2025.08.28

青春をささげた兄のために
多摩市愛宕在住 長谷川千代子さん

  • 家族のことを振り返る長谷川千代子さん

  • 出征前の政敏さん

 愛宕在住の長谷川千代子さん(90)は、NHK朝の連続テレビ小説などで描かれる太平洋戦争や終戦時のことを見るたび、幼い時の記憶がよみがえる。

 静岡県駿東郡の長泉町に生まれた長谷川さんは、80年前の終戦時は国民小学校の6年生だった。「戦争中、戦後の記憶は定かではありませんが、80年前の家族写真を見ては、戦争で亡くなった政敏兄さんのことを思い出すんです」と語る。

 長谷川さんの実家は加藤精米店という米屋を営んでいた。店先に出征前の政敏さんがやってきた姿を見て両親はすぐに別れに来たことを悟ったという。戦闘帽をかぶり、背嚢(はいのう)を背負った姿だったそう。長谷川さんは「生家は米屋ですので、当時は食糧難の時代でしたが、母は餅をつき赤飯を炊き、お国のためと近所の方も招き、別れのひと時を過ごしました」と振り返る。

 母は長谷川さんの手を引きながら東海道線に乗り、横須賀の連隊につれていったという。「北海道や九州など生家が遠い戦友たちに重箱のものを分けると『おふくろの味だ』『優しい』『美味しい』と食べてくれた」とその光景をはっきりと覚えている。

 「兄はガダルカナル島で特攻隊としてアメリカの敵戦に向かい自爆したそうです」と長谷川さんは話す。後日、戦死の公報が届いた。「骨箱にはもちろん骨があるわけではないのに、父は『政敏が・・・』と言葉少なく骨箱を持っていたそうです。コツコツと音がして遺品の戦闘帽だけが入っていたことを母から聞きました」

 長谷川さんは「戦争のドラマを見ると、平和の時代に感謝です。『お国のために』と青春をささげた兄のことを6人兄弟の末っ子だった私が伝えることで、兄が喜んでくれたらいいなと思っています」と語った。

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