海老名むかしばなし 第12話「白椿の精【1】」
国分寺がすっかり衰微してその尼寺が薬師様と一緒になり、上の台(今の一の台)から現在の所へ移ってきたころのことである。
そのころの大山街道は国分の辻の第一分団の消防舎の下から土手下を薬師様の下へまっすぐに出て、石段の下で直角に曲って大けやきの所へ出、さらに海老名小学校下の交通信号付近から海老名耕地へと坂を下ったのである。ちょうど二つのかぎカッコをずらしておいたようなややこしい街道であった。
この街道より一段高い薬師様(相模国分寺)のガケに太く生い茂った白椿が生えていて、毎年白い花をびっしりと咲かせ、その下を通る旅人は思わず足を止めてながめ入るのであった。
このころになると、夜な夜なきまって薬師様の門前の茶店にひとりの美しい娘が現れるのであった。黒髪をすっきり二つに分けて後に垂らし、きめこまかい肌が透きとおるほどの薄い白妙の衣を身につけ、その上何ともいわれぬ香りを漂わせて気品にあふれていた。
この娘がどこの者か知る人はいなかった。そして茶店では一杯の茶を所望するばかりで休んでいくのだが、不思議と娘が立ち寄る店は栄えて行くのである。
こうしたことがしだいにうわさに上っていったのであるが、白椿の花がみんな散ってしまうころになると、ぱったり娘も来なくなってしまうのであった。《次回に続く》
参考資料/海老名むかしばなし
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