海老名・座間・綾瀬 コラム
公開日:2018.10.05
海老名むかしばなし
第17話 摩尼山の七不思議(二) 枕返しのお地蔵様
如意輪観音堂の左外陣の正面におられるお地蔵様を、「枕返しのお地蔵様」といい、足を向けて寝ると、いつの間にか枕が足の方に移動しているというので、七不思議の一つに数えられていた。高さが一メートルもあるお厨子の中で、岩に腰掛けておられる。
いつの時代でも若者たちは好奇心が強く、いたずら好きのようである。この枕返しの現象についても、
「寝相が悪くて、自分で枕を足の方へ蹴とばしてしまうのだろう」
「いいや、お地蔵様の霊験だ」
「作り話にきまっている」
などとさんざん論争したあげく「それではみんなで真疑をたしかめてみよう」ということになって、何人かでそろってお地蔵様に足を向けて外陣に寝た。
ところが目をさましたら、全部枕が足の方、すなわちお地蔵様の前に移動していた。それからは、この枕返しの奇異を疑う者はなくなった。
ところが無住だった明治中期、ねずみがお地蔵様の腰掛けておられる台座をかじって、子供の手が入る位の穴をあけて中に巣を作り、さらに下から胎内にまで入り込んでしまった。
ねずみを追い出して中を掃除したら、胎内に納められていた経巻が食いちぎられて巣になっていた。
さだめし由緒あるものであったろうに、世話人たちはねずみの糞尿にまみれた経巻をひとまとめにして焼き捨ててしまった。
その後はいくらお地蔵様に足を向けて寝ても、枕返しの不思議は起こらなくなった。
参考資料/海老名むかしばなし
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