海老名むかしばなし 第31話 焼坊主【1】
本郷地区内に「焼坊主」という地名の場所がある。「焼坊さん」「処刑場」ともいわれ、区画整理の結果、現在は本郷に編入されたが、元は杉久保地区内であった。この地名由来には次のような物語がある。
江戸時代も泰平の元禄の世、杉久保にある僧がいた。この僧なかなかの色情家で艶聞は常に絶えなかった。たまたまその僧の寺の近くに美貌の妻女が住んでいた。僧は妻女の美貌に魂を奪われ、遂に夜な夜な出かけて行ってはその妻女に言い寄るのであった。
こうして人目を忍ぶ仲もいつとは知れず村人の口の端にのぼるようになった。人々は、はじめは好奇心にかられて話題にしていたが後には「青年たちの若気の至りのあやまちと違っていやしくも村民教化の立場にある僧が、事もあろうに人妻に手を出すとはもってのほか」と僧を非難するようになった。そして、その声は日ごとに高まっていった。
こうなっては名主をはじめ村役はだまって見過ごしているわけにはいかない。そこで村役たちはある夜、木内某家に寄り合ってその善後策を協議した。
一方、このことを早くも知った住職はどんな対応策がとられるか心配になってきた。それでその夜ひそかに木内家の縁の下にもぐり込んで結論はいかにとかたずをのんで聞き耳を立てていた。
《次回に続く》
参考資料/えびなむかしばなし
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