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児童養護施設 理事長に聞く 子を巡る時代変化とは
令和の時代がスタートする。次世代を担う子どもを取り巻く環境は、この30年間でどのように変化してきたのだろうかーー。本紙では、緑ケ丘にある児童養護施設「成光学園」の矢部雅文理事長に、変わりゆく時代の背景についてインタビューした。
―令和の時代が始まりますね。
毎月タウンニュースに連載を載せていますが、先の連載で、「令和元年を児童養護施設(以下、施設)の根幹を作り直す“元年”にしたい」と書きました。なぜ作り直す必要があるのか。それはこの30年間で、子どもの周囲環境が大きく変化し、それに伴い施設に求められる役割も大きく変化したからです。
―どう変化した?
元々この施設は、戦後孤児など身寄りのない子などを対象に、衣食住の提供の場として始まりました。しかし平成に入り、社会で「児童虐待」が注目されるようになり、当施設でも、虐待によって家族で暮らせない子どもたちの受け入れ先としての機能を大きく求められるようになりました。
一般的に、子どもが笑うと親も笑いかけてくれるものです。そしてそれが、コミュニケーションの手段や日常的な学習意欲に繋がります。しかし、虐待が行われている家庭だと、「自分が笑うと、親に殴られる」。次第に子どもは笑わなくなり、一般の家庭とはまったく逆の環境で育つことを余儀なくされます。我々職員は、これを少しでも正しい環境に戻すべく、日々奮闘しています。18歳になり社会に出て行くとき、きちんと生活できるようになってほしいからです。
そして更に時代は進み、ここ5〜6年は「虐待」と一言でくくるのではなく、その要因や背景を「細分化」する傾向が強くなったように感じます。
たとえば背景のひとつとして、「親自身が虐待被害者」というケースがあります。また、子や親の発達障害などが発端で虐待してしまうケースもあり、それぞれに適した介入が求められている状態です。当施設でも、職員同士連携して、その子に合わせたケアを模索しています。
―細分化することはいいこと?
細分化し、専門的にケアしていくこと自体は悪いことではないと思います。けれど、「あの子は虐待された子だから」「発達障害の子だから」―― というラベルだけ聞くと、「自分には関係ない」と早々に線引きして理解を止めてしまいがちです。第一印象だけで判断してしまうのは、その子自身の可能性を狭めてしまうことにもなりえます。近隣の方はもちろん、市内の方には、誰かが付けたラベルにとらわれず、目の前にいる「その子」と接して何かを感じてもらえたら嬉しいです。
新しい時代が始まりますが、子どもたちの未来が決して暗いものにならないよう、我々大人たちが気を引き締めて行かなくてはなりません。
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