伊勢原美術協会の会長を務める画家の源馬和寿さん(75)がこのほど、母校の東北大学電気通信研究所に自身の作品「淡墨桜―悠久1500年」(150号)を寄贈。10月7日には現地で寄贈式が行われた。作品は今年6月、全国公募展「たぶろう展」で内閣総理大臣賞を受賞している。
静岡県出身の源馬さん。物理や数学が好きだったことから、東北大学工学部に進学。大学院では電気通信工学を専攻し、電気通信研究所で研究に励んだ。修了後、日立製作所へ入社し、スーパーコンピュータの開発などをけん引した。
大学時代を仙台市で過ごし東日本大震災を機に、8年間にわたって復興支援にかかわり、カキの養殖や学生支援などを行ってきた源馬さん。作品の寄贈には、源馬作品の紹介活動を展開する源馬アート支援会などが尽力。同会は次世代の青年たちにあらたな発想をもたらすきっかけが生まれることに期待と希望をこめて、電気通信研究所への寄贈を提案した。
同研究所も同所出身でありながら、画家という稀有な生き方とその活躍や、古木桜の生命力を追及する絵から、感性を刺激するなど、これからの時代を担う学生たちへの良いメッセージ性があるとの考えから、申し出を快諾した。
古木桜の生命力を油彩で表現
源馬さんはある日本画家の淡墨桜に感動以来、油彩画の力強さを取り入れた新たな桜表現に挑戦しているという。今回総理大臣賞を受賞した作品は日本三大桜の一つ、岐阜県根尾谷の淡墨桜。古木の太い幹が圧倒的な存在感を放ち「1500年の時を経てなお華麗な花を咲かせる巨木桜の生命力に人は感動する。悠久の時間がしみ込んだ古木桜の生命力と花の繊細さを描いた」と源馬さん。寄贈された作品は同研究所の本館1階ロビーに飾られた。
源馬さんは「作品は作者の手を離れた瞬間から、新たな人生が始まる。それは作者の思ってもみない方向へ進むこともある。多くの学生が研究だけでなく生き方に迷ったときにこの絵を見て何かの助けになればうれしい」と話す。妻の惠子さん(74)は「多くの方の支えで実現できたことに感謝する」と話す。
55歳で画家へ転身
40代のころから絵を本格的に学んだ源馬さん。最初の16年間を美術協会前会長の石田精吾氏に師事。欧州での単身赴任を終えると、絵画をライフワークにしたい思いが高まり「画家として一人前になるには定年後では間に合わない」と55歳で早期退職した。
同協会のほか日本美術家連盟に所属。内閣総理大臣賞をはじめ、文部科学大臣賞など数々の受賞歴がある。2020年から同美術協会の会長を務めている。
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