県の私立学校教育功労者表彰を受けた学校法人文伸学園の理事長を務める 田中 文雄さん 上土棚中在住 84歳
42年間 教育にかけた情熱
○…私立学校教育の振興を図るため、他の模範となる顕著な功績をあげた教育者などに贈られる表彰。1974年に母親が設立した綾南幼稚園で開園当初から働き、園長を経て95年の法人設立時に理事長に。相和私立幼稚園協会副会長、県私立幼稚園連合会の理事や常務理事を歴任し、県内私立幼稚園の教育の充実・発展に尽力してきたことが評価された。「恐縮してしまうよね」と、率直な感想。
○…開園当時は第2次ベビーブームの頃で、ようやく幼稚園が一般化してきた頃だった。園の数も少なく、「あの頃は願書を求めて保護者が徹夜で並んでいた。寒かったから、お茶を出したりしていたよ」と、懐かしそうに目を細める。最も印象深かったのは、一番初めの卒園式。「それまで農業だったから、あんなに感動したのは初めてだった。本当にやって良かったと思った瞬間だった」。その様子を思い出し、目頭に涙を滲ませる。
○…江戸時代からの綾瀬の家系で、養蚕家の長男として生まれる。教育熱心な父のもと姉2人は教員に、自身は大学まで進学した。農家から幼稚園への転身を、「父の影響が大きかった」と振り返る。怖かったが、情が深く頼れる父。その姿が「1人でも多くの園児を受け入れてあげたい」という姿勢の根底にあるのだろう。今は息子が園長を継ぎ、孫も同じ道を歩んでいる。自分の背中を追ってくれていることに「嬉しい」と笑顔を見せる。
○…理事長業務の傍ら、昔取った杵柄でサツマイモやジャガイモ、トウモロコシ、もち米など園で使う分に加え、小学校に分ける野菜作りも行うなどアクティブに過ごす。幼稚園教育に携わり42年。環境や制度は刻々と変わるが、子どもの本質は昔から変わらないという。「あ、でも最近の子は体格が良くなったかな」と笑うが、「これからも、子どもたちを大切にしていきたい」と話す姿は、教育に対する想いに溢れていた。