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綾瀬 コラム

公開日:2019.09.06

連載
路線バスっておもしろい!
第14回 「ピンポーン」のヒ・ミ・ツ路線バス運転士 坂井昭彦

  • 絵・坂井なな子

 「ピンポーン」「はい、次とまります」と路線バスに乗って途中下車する時、降車ボタン(押しボタンスイッチ)を押しますよね。



 この降車ボタンにはヒ・ミ・ツがあるんです(別に隠すことではありませんが)。



 実はランプの部分と押す部分は、基本的に平面になっているのですが車椅子の人が使用する車椅子用降車ボタンは、体が不自由な人でも押しやすいように押す部分が少し飛び出ているのです。逆に優先席やスタンションパイプ(黄色やオレンジ色の掴まり棒)にある降車ボタンは鞄や人が当たっても押されないようボタンが少し凹んでいます。今度、バスに乗られたら触って確かめてみて下さいね。ただ強く触るとピンポーンて鳴ってしまいますから気をつけて。



 今から5年程前、午前中に○○小学校の貸切運行をし、午後から同じバスで一般路線を運行しました。始発から4つ目のバス停に近づいたその時、小学校低学年ぐらいの男の子が大きな声で「ピンポーン」と叫びました。車内は笑いで騒めき、自分も車内マイクで確認の為「次のバス停で降りられますか」と聞くと「はーい」と元気よく返事がありましたのでバスを止め、降車扱いをしました。



 その時、なぜあの子は降車ボタンを押さなかったのかと思ったのですが、わかったのです。自分がまぬけだったことが…。



 午前中、小学校の貸切運行をした時、小学生たちがおもしろがって降車ボタンを押すので運転席にある降車ボタンの元のスイッチを切っておいたのです。午後の一般の運行で、そのスイッチを戻すのを忘れて走っていたので降車しようとした子は、降車ボタンを押しても鳴らないので慌ててとっさの判断でピンポーンと叫んだのでしょうね。大人だったら降りまーすと声をかけたりしますが、その子にとっては困ったあげくピンポーンて言っちゃったんですね。ごめんね。その時の君。



 でもおもしろかったので、また言ってほしいなあ。なあんてね。

 

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