三浦の散歩道 〈第32回〉 みうら観光ボランティアガイド協会
冬の「小松ヶ池」は、枯れた芦の群生と静かな水面に、時折り、水鳥がやって来ると漣ができるありさまは、山あいの静寂さを感じさせるものがあります。
現在、水田はありませんが、この地に残る伝説に、当時の厳しい農民の様子がうかがわれます。
昔、池の近くに、働き者で心やさしい小松という嫁さんがいました。ある日、姑から広い田を1日で植え付けるように言われます。心やさしい小松さんは言われるままに、休みも取らずに1日せっせと働きましたが、終わらないうちに、太陽は西に沈んでいきます。小松は、太陽に向かって「どうか、この苗を植え終わるまで、陽を沈めないでください。引き換えに私の命を差し上げます」と騙りかけて、一心に祈りました。すると、沈みかけた太陽が再びあがり始めました。とうとう、最後の苗一本を植えた時、小松の体は田の底へ沈んでしまいました。しかし、小松が植えた苗は秋が来ても実らなかったというのです。
この話が村中に広まり、祟りを恐れて小松の田の近くで田を耕す人はいなくなって、草ぼうぼうの荒れ地になった田に水が流れ込み、芦が生えて、大きな池になった。夜になると池の中から女のすすり泣きの声が聞こえたというのです(菊池幸彦編著「三浦半島の民話と伝説」より)。
この池も南側に電車が通るようになって半分になってしまったと言うことです。
三崎口へ向かう線路を抜けて、道路へ出ると、電車の通る側の歩道に河津桜が街路樹として植えられ、足元には菜の花が続いています。これは、「三浦海岸まちなみ事業協議会」が「桜の咲く里づくり」を目指して植樹されたもので、三浦海岸駅から池までの道のりには約1千本の河津桜が植えられているとのことです。その路を三浦海岸方面に歩いてみましょう。つい先き頃までは、車は直進できませんでしたが、今では通行が可能になり、車の往来も増した感があります。「小羊保育園」の先を右折して、少し登り坂を行くとホテル「マホロバマインズ」の横に至ります。この辺りの小名が「柿ヶ崎」です。ホテルの横を抜けて国道134号線へ出ます。「南下浦郵便局」前を海岸へ向かい、すぐの信号を右折すると、かつての旧道です。小名は「岩井口」となり、この道に「閻魔堂」があります。「三浦古尋録」に「十王堂松覚院」と記してあります。近くの「十劫寺」の子院にあたります。
お堂の隣に「岩船地蔵」が祀られています。
昔、里の漁師が沖に出た折り、俄かの時化に遭い、船が暗礁に乗り上げ、あわや沈没の危機に日頃信心していた地蔵尊に救いのお祈りをあげました。すると、船は沈没を免れ、無事に里に帰ることができたのです。漁師は地蔵尊のお加護と感謝して、船に乗った地蔵尊を造り、祀ったというのです。閻魔大王の本地仏は地蔵菩薩なのです。
つづく
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