しらす漁にかける若き漁師 (株)君栄 宮川航さん(25)
三崎で唯一、しらす漁(湘南しらす)を行っている(株)君栄の宮川元彦社長(51・3代目)と息子の航さん(25・4代目)。今年も3月11日に漁が解禁。3年目を迎え「やっと道筋が見えてきた」と航さんは安堵の表情を見せる。後継者不足が深刻化している中、若い力が三崎に漲っている。
店の戸が開くと真っ先に客の所へ。「いらっしゃいませ。生しらす、まだありますよ」とテンポの良い明るい声が店内に響く。「美味しかったから来たよ、と言ってくれるのはしらすをやらなければ経験できなかったこと。喜んでくれる客に会うと、この仕事をやっていて良かったと思うよ」と柔らかな表情を見せる。
しらす漁は、漁場の問題や乱獲防止のため許可制で船の数も限られている。(株)君栄は、2012年2月に許可が下り、操業を始めた。湘南しらすは「1そうびき」という魚がつぶれにくい獲り方で、漁師自らが鮮度管理を行っていることから品質の面で高いのが特徴。生はもちろん、漁師が加工した釜揚げや干し加工品も好評で県の「かながわブランド」にも指定されている。
しらす漁を始める前は、主に金目鯛や鯖を獲っていた。しかし、近年の不漁で漁獲量は年々減少。年間の操業数も7〜80日と減り収入も不安定な日々が続いていた。そんな中、父の元彦さんは活路を見出すためにしらす漁一本にすることを決断。航さんも現状の厳しさは実感していた。「父にとって、重大な決断だった思う」と振り返った。
高校卒業後、すぐには漁師の道を選ばず20歳までの2年間、電気屋や大工他様々な職に就いた。しかし、胸の内はすでに漁師になることを決めていた。「漁師の世界しか知らない人生より他の業界を経験し学んだ上で漁師になりたかった」と明かす。2年間で得た経験は、大きな糧となった。
「一番良いものを提供している」と力の籠った言葉が返る。天日干しの時間は、その日の気温や湿度、状態を見極めたうえで設定。毎日細かく調整している。全ては、最高の状態で提供するためだ。これからのテーマは販路拡大。イベントでの出店や出張販売を行うなど、新たな展開を行っている。「今の店は、少し外れにあるので、買いに来てくれる高齢者にとっては不便だと思う。誰でも気軽に味わってもらえるように店舗を増やしたいのが夢」と仕事に熱が入る。
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