三崎町小網代出身で、映画・ドラマの助監督として活躍する松倉大夏(だいか)さんが、猿島(横須賀市)を舞台にした短編映画制作に取り組んでいる。豊かな自然と歴史遺産が数多く残る島の魅力をPRする映像制作プロジェクトに監督として参加。映像業界を志すに至ったきっかけや今作への思いなどを聞いた。
松倉さんは幼少期からテレビや映画を見るのが好きで、物心ついた頃から漠然と映像制作の世界に憧れを抱いていた。それは、進学した都内の大学近くにあった名画座「ギンレイホール」に、日がな一日入り浸ることもあったほど。学年が上がり、そろそろ就職活動が現実味を帯び始めようかという時、「映画関係の仕事に就くにはどうしたらいいか」と、思うようになったという。しかし、実際は専門知識を学んだわけでも、人脈があるわけでもなく、具体的に何をすればなれるのか考えあぐねていた。
先輩との出会い
「先輩に映画監督がいるよ」。ある日、母校である県立横須賀高校バスケットボール部のOB会で紹介されたのが、同じく三浦市出身の矢城潤一さんだった。矢城さんが製作・監督・脚本・編集を務めた映画「ある探偵の憂鬱」に感銘を受けて志願し、大学で哲学を学ぶ傍ら、見習いとして初めて現場に足を踏み入れることになった。
その後、大学院へ進むが、26歳の誕生日を前にふと疑念を抱く。「はたして、このままでいいのだろうか」。かつて頭の中で思い描いていた20代後半の大人像は、精力的に仕事をこなす姿。「高校を出て専門学校へ通い、すでに現場でキャリアを積んでいる人たちがいる。そろそろ本格的に映画の仕事をしなければ」と決意した。
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現代美術家の両親のもとに生まれ、義父もまた現代美術家だ。「作品が売れて初めてお金になる仕事。親の作業を手伝ってと言われても、ほとんど仕事(お金)にならないのにと思っていた」と、子どもながら反発心があった。「同じ"作品づくり"でも、自分が映像制作を選んだのは、その反発がどこかにあったからかもしれない」
大学院を3年で中退し、映画やドラマの助監督としてフリーで活動。以降、数々の作品に携わり、横須賀を舞台にした矢城監督作品「スカブロ」もその1つだ。経験を積むなかで、「猿島をPRするショートムービーを(監督として)撮ってみないか」と再び同氏に声を掛けられ、二つ返事で引き受けた。
地元凱旋を誓う
猿島は青春時代にもたびたび訪れたことのある、思い出深い場所。冬でも青々と茂る草木、光、トンネル、黄金色に染まる夕景、対岸に見える市街地の夜景など、撮影を機に改めて秘められた魅力を感じることができたという。
手掛けた作品の名は、『タイムレスアイランド』。40年前のプロポーズ以来、初めて猿島にやってきた夫婦が主人公だ。思い出話をしながら島を回る途中、俳優の中原丈雄さん演じる夫が、「じつはあの日、きみにプロポーズをするつもりはなかったんだ」と打ち明け、1人の男の子との不思議な出会いについて語り出して-という物語。
撮影は12月中旬に行われ、「いいものが撮れたと思う。とても楽しかった」と笑顔。「(女優の)大島さと子さん演じる妻の明るく快活なキャラクターが魅力的で気に入っているので、そこも見てもらえたら」
初日こそ雨に泣かされ頭を抱えたが、難題をどう解決していくか、制作の進行管理を一手に任される助監督としてのノウハウを発揮して乗り越えた。「ゆくゆくは横須賀の映画館のスクリーンで、自分の監督作品を流せるように頑張りたい」と目標を語った。
ショートムービーは、(株)トライアングルのユーチューブチャンネルで2月公開予定。
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