三浦 文化
公開日:2023.01.01
声枯らし汗だくで磨く話芸
講談師 神田ようかんさん
小気味良いリズム、情景が浮かぶリアルな描写、迫力、臨場感――。釈台と呼ばれる小さな机の前に座り、張り扇を叩いて調子を取りながら、歴史にちなんだ読み物などを観衆に読み上げる日本の伝統芸能の一つ講談。小網代出身の井上寛斗さん(25)は昨年9月、高座名「神田ようかん」として、講談師デビューを果たした。「舞台から初めて客席を眺めると、改めて私は表現の世界で生きていくんだと実感した」と振り返る。
幼少期から英語演劇を通し、世界文学に触れてきた神田さん。上智大学に進学後は、英国の劇作家で詩人のシェイクスピアについて学んだ。大学院で修士論文に励んでいた時の息抜きに、ふと講談を目にする機会があった。「戯曲や詩的な響きの美しさと重なる部分があった」。息もつかせぬ展開に衝撃を受けた。
それから2年間、各所に足を運び、ひたすら講談の世界に浸った。東西合わせて約100人いる講談師。特に光って見えたのが、神田春陽氏だった。「講談と正面から向き合うプロフェッショナル」といつしか憧れを抱くようになり、思い切って弟子入りを申し出た。
「鞄持ち」から始まり「前座見習い」を経て、現在は「前座」の身分で、「二つ目」「真打」に昇進するには10数年を要する長い道のりだ。道具の用意や着付け、お茶を出し、会場の受付といった師匠やほかの講談師たちの身の回りの世話や雑用が主な役割。舞台を踏めるのは、開場から開演までの30分のうち、前座は1人10分のみ。目の肥えた常連客の前で誤魔化しは利かない。声を枯らして額に汗をほとばしらせながら、持てる力を最大限出し尽くす。
講談のネタは新作含め約5千あると言われる中、講談師が最初に覚えるのが武田信玄と徳川家康の戦いを描いた『三方ヶ原軍記』。見せ場や修羅場の読みにイロハが詰まっており、台本は自身が筆で半紙に書き写し、張り扇も手作りする。発声や独特の調子を習得することは、最大の楽しみであり苦しみでもある。体全体で覚えるために努力を惜しまない。稽古がない日は福祉施設で運転手のアルバイトをして生計を立て、終業後は録音した講談を聴く。
「今は目の前のことにしっかり取り組み、着実に話芸を身に付けたい。その上で、いつか一人前の講談師として個性あるキャラクターを築き、業界全体を盛り上げる一助になれば」と神田さん。これからも情熱を胸に舞台に立ち続ける。
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