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帆船「やまゆり」を2度目の五輪へ 課題は「年間300万円」の維持費

文化

掲載号:2015年8月28日号

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 1964年、東京五輪のヨット競技会場となった江の島で、国内外の来賓を迎えるクルーザーや警備艇として活躍した、2本マストの木造艇「やまゆり」。江の島が2020年東京五輪セーリング競技の会場に決定したことを受け、長年、保存活動を続けてきた市民は「やまゆりを2度目の五輪で活躍させたい」と意気込む。課題は年間300万円にも上る維持費。そのため、広く支援を募っている。

 ボッ、ボッ、ボボッ…。姿は見えずとも、腹に響く重厚でクラシカルなエンジン音だけで、木造帆船「やまゆり」がハーバーに戻ってきたことが分かる。

 「水に馴染むのは木造ならでは。しっとりとした乗り味で、乗った人は誰しもファンになってしまう」。「NPO法人帆船やまゆり保存会」の中村満夫理事長はこう言って誇らしげに笑う。同会は「湘南の貴婦人」の愛称を持つ同船をこよなく愛し、長年、動態保存を支えてきた。

廃船の危機乗り越え

 「やまゆり」は1964年の東京五輪ヨット競技開催に合わせ、62年に神奈川県によって建造され、国内外の来賓用クルーザー、県警の警備艇として活躍した。70年には江の島ヨットクラブが買い取り、42年間にわたって維持・管理されてきた。

 しかし、木造特有の船体の傷みや装備品の劣化もあり、廃船の危機に。その時立ち上がったのが、同クラブ会員だった中村さんらだ。

 「廃船なんてけしからん。だったら自分が何とかする」。同船の保存・活用を目的に93年、「やまゆり倶楽部」を設立、2013年には、NPO法人化にもこぎつけた。

腐食との戦い

 船齢53歳になる「やまゆり」。その質感や佇まいは、ほかに代え難い魅力があり、根強い人気を誇る。海上でもすれ違う船から「おっ、やまゆりだ。まだ現役なのか」と感嘆の声が上がる。

 しかし保存には、木造船ゆえの苦労が付きまとう。船底の腐食や水漏れなどがあり、維持にかかる費用は年間約300万円。中村理事長は「直したそばから腐っていく」と苦笑する。

 これらの費用は、会員の年会費(1万円・入会金3千円)や寄付が頼り。財政状況は常に厳しいのが現実だ。「今後も保存していくためには、地元の人の関心を高め、より多く協力を募ることが不可欠」。そこで考え出したのが、1時間の「セーリング体験」だ。週末になると会員らは、江の島を訪れた人々にビラを配り参加者を募る。こうした努力の甲斐もあり、会員数は500を超える。

感動再び世界に

 中村さんは「64年五輪でヨット競技に出場したノルウェー国王(当時皇太子)が14年前に江の島を訪れた際、『あのやまゆりが、今もなお現役なのか』と感嘆してくれた。5年後は世界中の人に見てもらい、感動を分かち合いたい。やまゆりを必ず美しい姿でこの江の島の海を走らせる」と意欲を見せる。江の島が2020年東京五輪の競技会場になったことを、保存の弾みにしたい考えだ。

 体験セーリングの申し込みや同会への問い合わせは、【電話】0466・41・0307、【URL】http://yamayuri-club.jp/で。

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