茅ヶ崎・寒川 社会
公開日:2022.09.09
「8月最後の日曜日」花火が上がるその理由は
8月28日午後7時。カウントダウンとともに、茅ヶ崎市内の海岸の一角から次々と花火が上がった。約170発、時間にして10分足らずの小さな「花火大会」は今年で25回目になった。当初から打ち上げを続ける花火師の男性(56)に聞いた。
仲間の事故きっかけに
25年前の夏。男性と同じ神輿グループの後輩が海の事故で亡くなった。23歳の若さだった。
その年の8月最後の日曜日、男性は玩具店でありったけの花火を買い込み、友人たちと事故のあった海岸で火を付けた。「彼が空から花火の輝きを見てくれたらいいな、と思って」
翌年も花火を打ち上げると「せっかくならもっときちんとした花火を」という気持ちが沸き上がった。
男性は花火の打ち上げに必要な資格を取得。「湘煙火工」というグループを作って知人らから協賛を募り、本格的な打ち上げ花火を上げるようになった。「台風で延期にした時も1発だけ上げて『8月最後』にこだわってきた」という。
やがてこの「花火大会」は、地域でも知る人ぞ知る存在に。告知など一切していないにも関わらず、多くの人が見物に訪れるようになり、この日も打ち上げが終わると「ありがとう」の声が海岸に響き渡った。
続けるうち男性の心境にも変化が生まれたという。「最初は仲間のためだったけれど『今年亡くなった両親のために打ち上げて』と協賛金を持ってくる人がいたり、コロナ禍以降は『どこにも遊びに行けなかったけれど、いい思い出になった』『元気をもらえた』と子どもたちが言ってくれることも増えた。花火ってそういう特別な力があるものなんだね」
最近、次男が花火打ち上げのための資格を取得し、長男も来年の取得に向けて準備を進めている。「喜んでくれる人がいる限り続けていきたい」と笑顔を見せた。
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